フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-11
朗らかな表情のアントーシャに、最初に言葉を掛けたのはルーガだった。滅多に遠慮というものをしないルーガは、がりがりと頭を掻き毟りながら、呆れたように言った。
「アントーシャ様の仰ることの意味が、おれには全く分かりませんよ。おれの頭が悪いからなのか、アントーシャ様が途轍もない方だからなのか。多分、両方なのでしょうな」
大きな溜息を吐くルーガの様子に、アントーシャは更に微笑んだ。ルーガの周りでは、オローネツ辺境伯もイヴァーノも、何とも微妙な表情でアントーシャを見詰めている。