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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 2-6

 さて、それからも長い時間をかけて話し合ったわたしたちは、翌日からさっそく行動を起こすことにした。善は急げっていうし、いろいろと予想していながら、結果的に間に合わなかったりしたら、余計に悔しいからね。
 
 わたしの最初の役割は、ネイラ様に手紙を書いて、事情をお知らせすることだ。できるだけ正確に情報を伝えて、ネイラ様の指示を仰ぐ。
 本当にクローゼ子爵家とセレント子爵がつながっているとしたら、ルーラ王国にとって一大事だから、ネイラ様の指示に従うのが一番だって、皆んなで決めたんだよ。
 
 わたしが一生懸命に手紙を書いて、さあ、紅い鳥に来てもらおうと思ったら、スイシャク様に止められた。スイシャク様が、自分が届けてあげるよって。
 スイシャク様が送ってくれたメッセージによると、わたしがお世話になっていることだし、何よりも〈神威しんいげき〉に会ってみたいから、この機会に飛んで行ってくれるらしい。
 
 〈神威の覡〉ってどういう意味なのか、スイシャク様に質問したんだけど、答えてはもらえなかった。そのうちにわかるようになるから、自分で正解を探しなさいって。
 ただ、神霊さんの世界では、何百年かに一回、〈神威の覡〉と〈神託しんたく〉が現れるっていわれてるんだって、それだけは教えてくれた。
 ネイラ様が〈覡〉だっていうことは、ひと目見てわかったけど、何だかもっと強い存在みたい。本当にすごいんだね、ネイラ様って。
 
 そうそう。スイシャク様は、クローゼ子爵家の偵察が終わってからも、しばらくは家にいてくれることになった。クローゼ子爵家のことが決着するまでは、見張りを続けなくっちゃいけないから、こっちの世界に留まって助けてくれるらしい。
 神霊さんの分体による泊まりがけのご助力とか、対価が心配で青くなったんだけど、それは気にしなくてもいいよって、優しいイメージを送ってくれた。わたしとスイシャク様の間には、もう回路が開いていて、力を貸すのも簡単だから、特別に〈眷属けんぞく扱い〉でお安く? してくれるんだって。
 
 スイシャク様の眷属とか、あまりにもおそれ多くて、本当に血の気が引きそうになった。わたしには、分不相応なご好意だなって思ったしね。
 
 でも、クローゼ子爵家のことを考えると、スイシャク様のお力を借りられることは、本当にありがたかった。
 今は、スイシャク様のご好意に甘えることしかできない。わたしは、無力な十四歳だから。だから、このお返しはいつか絶対にさせていただこうと、固く心に誓っている。恩を知る少女なのだ、わたしは。
 
 肝心のフェルトさんは、今日、手荷物だけ持って、うちの〈野ばら亭〉に引っ越してくることになった。
 
 フェルトさんのお母さんは、お兄さんの商会で仕事をしていて、お家も一緒。お母さんのご両親とか、皆んなで一緒に住んでいて、フェルトさんも大家族で育ったんだって。それで、キュレルの街の守備隊への就職が決まったときに、詰所へ通いやすい下宿を見つけて、独立したんだ。
 今の下宿は静かなところで、とっても住みやすいらしいんだけど、こんなときには用心が良くない。昼間に入り込まれたり、いきなり訪ねてこられたりしても、誰も気づかないかもしれないからね。
 
 〈野ばら亭〉は大きな宿屋だから、いつでもたくさんの人目があるし、夜も警備の人たちがいてくれる。〈野ばら亭〉で騒ぎを起こすなんて、いくらクローゼ子爵家でもやらないだろう。
 フェルトさんは、これ以上うちに迷惑をかけたくないって、ずっと拒否してたんだけど、最後はお父さんが叱りつけた。息子のくせに余計な遠慮はするな、黙っていう通りにしろ、って。そのときのお父さんは、すごくカッコ良くて、優しくて、フェルトさんはちょっと泣いてた。お父さん、大好き。
 
 〈不受理申し立て〉を勧めてたお母さんは、今朝からフェルトさんを連れて出かけて行って、さっさと書類を用意してきた。法律の専門家のところで、正式な〈申立書〉を作ってもらったんだって。
 
「こういう書類を素人が作ろうとすると、余分な時間がかかってしまうし、後で不備があるっていいがかりをつけられる可能性もあるの。王都で一番の法律家が、キュレルにも事務所を持っているから、そこに頼んだわ。法理院を高位で退官した方だから、代理人の名前だけですぐに受け付けてくれるわよ」
 
 喉を鳴らす猫みたいな顔で、満足そうに笑うお母さんは、多分、敵にしちゃったらだめな人だと思う。
 
 結局、昨日の話し合いの最後には、クローゼ子爵家がフェルトさんに接触してくるのを待つまでもなく、先に〈不受理申し立て〉を提出しようっていうことになった。絶対に先手を取りたいし、〈お母さんに出生の秘密を聞いたけど、結婚の邪魔をされたくない〉っていえば、そんなに不自然じゃないだろう。
 正式な書類は用意できているから、フェルトさんが手荷物を持って戻ってきたら、すぐにキュレルの街にある法理院の分院に行って、提出してくる予定なんだ。
 
 もちろん、お父さんも総隊長さんも、フェルトさんのお母さんも、あらかじめ決めた通りに動き出している。ネイラ様が返事をくれたら、きっとそれが反撃開始の合図になる。アリアナお姉ちゃんとフェルトさんの未来は、絶対にわたしたちが守るんだ!
 
 でね、皆んながそれぞれ、できることを始めていくなか、アリアナお姉ちゃんがどうしたかっていうと、しばらくの間、アリオンお兄ちゃんになることにしたらしい。何をいってるのかわからないと思うけど、わたしだってわからないよ……。
 
「フェルトさんが来たよ、チェルニ。一緒に応接間に行こうね」
 
 そういって、わたしを呼びに来たのは、アリアナお姉ちゃんのはずの、アリオンお兄ちゃんだった。
 
 いつも肩のあたりでカールしていた金色の髪は、きっちりとひとつにまとめて、後ろに流してある。当然、リボンも髪飾りもつけていない。
 清楚で可憐な服装をすることが多くて、それがとてつもなく可愛かったのに、今は黒い細身のズボンに、飾りけのない白いシャツだよ? 上から長めの黒いベストをはおっていて、女の子らしい体型はしっかりと隠されている。足元はといえば、やっぱり黒のショートブーツだった。
 アリアナお姉ちゃんは、普段からほとんどお化粧なんてしていなくて、薄いリップクリームを塗るくらいだったんだけど、当然それもなし。正真正銘のスッピンっていうのかな、これって。
 
 全体的に見ると、ちょっと良いお家の少年っていう感じのスタイルなんだけど、元がアリアナお姉ちゃんだからね。アリオンお兄ちゃんらしい人は、何かもう、すごかった。どうでもいいような服装だからこそ、素材の良さが際立ちまくってる。
 絶世とか、傾国とか、そんな言葉しか浮かんでこない、とんでもない美少年がそこにいて、わたしに向かって微笑んでいるんだよ!
 
「あのね、アリアナお姉ちゃん」
「アリオンだよ、チェルニ」
「……アリオンお兄ちゃん。別にアリアナお姉ちゃんのままでも、大丈夫じゃないかな。お兄ちゃんになる意味って、どこにあるの?」
「もちろん、相手を油断させるためだよ。それに、アリアナのままだったら、いろいろと動きにくいし、フェルトさんも心配するだろうしね。あとは、気合?」
 
 うん。わかったよ、アリオンお兄ちゃん。そのあたりのことは、あんまり考えていないんだね……。
 
 仕方がないので、わたしはアリオンお兄ちゃんと一緒に、うちの応接間に行った。そこにいたのは、守備隊からお休みをもらって、身の回りのものを運んできたフェルトさんと、お手伝いのために足を運んでくれた総隊長さん。それから、お父さんとお母さんだ。
 
 お父さんは、入ってきたアリオンお兄ちゃんを見て、もう諦めたっていう顔でため息を吐いた。お母さんは、すごくうれしそうな顔で、にこにこしながらアリオンお兄ちゃんに手を振った。
 でね、フェルトさんと総隊長さんは、不審な顔でアリオンお兄ちゃんを見てから、お父さんに聞いたんだ。
 
「ああ、何だ。この少年は、カペラ家のご親戚か何かなのか、マルーク。アリアナさんやチェルニちゃんと、ちょっと面立ちが似ているな」
「アリアナさんのご親戚ですか? まさか、お友達とかじゃないですよね」
 
 二人の言葉を翻訳すると、〈この非常時に、どうして部外者が同席するんだよ〉っていう文句と、〈アリアナさんとどういう関係なのか、さっさと吐け、このヤロー!〉っていう恫喝だよね。
 わたし、チェルニ・カペラも十四歳になって、ちょっとだけ言葉の裏を読めるようになったみたいだ。
 
 本来なら、いくら少年の格好をしていても、アリアナお姉ちゃんだっていうことは、ひと目でわかるはずだ。こんな美少年がそのへんにいるとは思えないし、顔立ちもスタイルも、やっぱりアリアナお姉ちゃんのままだから。
 
 それなのに、フェルトさんも総隊長さんも、アリオンお兄ちゃんのことを、本気で知らない人だって勘違いしている。フェルトさんなんて、あんなに大好きなアリアナお姉ちゃんを、見当違いな嫉妬の目でにらんでるしね。
 
 アリアナお姉ちゃんに印をくれた、世にもめずらしい神霊さん。ルーラ王国全体を見回しても、他に印をもらっている人はいないんじゃないかと思われる、これが〈幻を司る神霊さん〉のお力なんだ。
 
     ◆
 
 わたしたちの暮らすルーラ王国では、〈森羅万象しんらばんしょう 八百万やおよろず〉、すべてのものに神霊さんが宿ると考えられている。具体的にいうと、〈物質〉〈動植物〉〈状態〉、そして〈自然現象〉に、それぞれの神霊さんが御坐おわします。少なくとも、わたしたちはそう教えられて育つんだ。
 
 神霊さんが印をくれる確率からいうと、圧倒的に多いのが、何らかの物質を司る神霊さんで、次が動植物を司る神霊さん。この二つで、全体の印の九割を超えるらしい。
 
 状態の神霊さんについては、印をもらえる確率がかなり低くて、その分だけ強い神霊術を使える。ネイラ様を例に出すと、力を司る神霊さんの印をもらっているから、〈力が強い〉っていう情態を引き起こせるんだ。
 代表的なのは、〈風・火・水・土〉とか、〈熱・冷・湿・乾〉とかの神霊さんだろう。このあたりは、町立学校の高学年で習ったところだから、しっかりと覚えている。
 
 そして、最後のひとつ、自然現象を司る神霊さんになると、めったに印をもらう人がいなくなる。自然現象っていうのは、人間の能力を遥かにこえる、とても圧倒的で強い力だから、当然といえば当然だろう。
 雨を降らすことができるとか、いいお天気にしてもらえるとか、〈雨〉と〈晴〉の神霊さんだけは、何年かに一度くらいの割合で、印をもらう人がいるらしいんだけど、それ以外の自然現象となると、何十年に一人っていわれるくらい、本当にめずらしいんだよ。
 
 お姉ちゃんに印をくれた、〈幻を司る神霊さん〉は、蜃気楼っていう自然現象の神霊さんだ。騒がれるのが嫌だから、わたしたち家族は、〈鏡を司る神霊さん〉とか〈光を司る神霊さん〉とか、曖昧に濁しているんだけどね。
 
 お姉ちゃんが生まれて、あんまり間がない頃、お父さんとお母さんは、ものすごく悩んでいたそうだ。赤ちゃんだったアリアナお姉ちゃんが、あまりにも綺麗だったから。
 お姉ちゃんを見た人は、皆んなお姉ちゃんに夢中になって、大変なことになっていたらしい。貴族の人が求婚してきたり、毎日のように養女にほしいっていう人が出てきたり、しょっちゅう拐われそうになったり。お父さんとお母さんが、それこそ命がけで守っていなかったら、きっと今、お姉ちゃんはうちにいられなかったと思う。
 もう守り切れないんじゃないかって思いつめて、お父さんとお母さんは、アリアナお姉ちゃんの顔に傷をつけることまで考えていたんだって。
 
 でも、アリアナお姉ちゃんが、ちょうど一歳になった誕生日に奇跡が起こった。夜、お父さんとお母さんが、じっとアリアナお姉ちゃんの寝顔を見ていると、ふいに部屋いっぱいに白いモヤが立ちこめて、二人の頭の中にメッセージが響いたんだ。
 この子が自由に生きていけるように、力を貸してあげる。この子が自分で術を使えるようになるまでは、両親にも力を貸し与える、って。
 
 お父さんとお母さんは、自然に理解していた。印をくれた神霊さんが、蜃気楼っていう幻を司っていることも、その力の使い方も、アリアナお姉ちゃんを守る方法も。
 お父さんとお母さんは、涙を流して感謝しながら、すぐに神霊術を使ってみた。絶世の美少女であるアリアナお姉ちゃんが、〈かなりの美少女〉程度になるように、他の人たちに幻を見せてください、って。
 
 お父さんとお母さんは、自分たちの命でさえも、対価に差し出すつもりだったんだよ。毎日毎日、一日中、ずっと神霊術をかけ続けるなんて、膨大な対価が必要なはずだから。
 実際には、慈悲深い神霊さんは、アリアナお姉ちゃんの魔力をほんの少しと、金色の髪だけしか対価を求めなかった。アリアナお姉ちゃんの髪が、決して肩を超える長さに伸びないのは、それが理由なんだ。
 
 幻を司る神霊さんのお力のおかげで、カペラ家は平和に暮らしていけるようになった。お姉ちゃんに執着していた人たちは、憑物つきものが落ちたみたいに落ち着いて、首を傾げながら帰っていったらしい。
 自分たちが必死になっていたのは、この程度の美少女だったのかって。ふざけてるよね?
 
 アリアナお姉ちゃんが十歳になった誕生日に、お父さんとお母さんは、蜃気楼の神霊術を使えなくなった。もともと、アリアナお姉ちゃんのためにしか術を使ったことがなかったから、何の問題もない。
 アリアナお姉ちゃんと三人、〈神座かみざ〉の前にぬかずいて、長年のご加護に心からの感謝を捧げたんだ。
 
 今のアリアナお姉ちゃんは、〈かなりの美少女〉の擬態だけじゃなく、いろいろな幻を見せることができるようになっている。アリオンお兄ちゃんになって、〈わりと美少年〉だと思わせるのも、お姉ちゃんにとっては簡単なことなんだろう。
 わたしたち家族だけが見ている、〈絶世の美少女〉のアリアナお姉ちゃんの上に、皆んなが見ている〈かなりの美少女〉の幻があって、さらにその上にアリオンお兄ちゃんの幻を重ねているみたい。
 うん。こんな恐ろしい神霊術、他に使える人がいなくて正解だよね。
 
 フェルトさんに、キリキリにらまれたアリアナお姉ちゃんは、ふんわりと微笑んでから、アリオンお兄ちゃんに擬態した分だけ神霊術を解いた。
 
「は? アリアナさん? え? さっきの少年はどこに?」
「驚かせてしまって、ごめんなさい、フェルトさん。わたしです。わたしが神霊さんにお願いして、男の子に見えるようにしてもらっていたんです」
 
 フェルトさんも総隊長さんも、驚いて言葉が出ないみたいで、パカッと口が開いている。アリアナお姉ちゃんは、幻を司る神霊さんについて、ちゃんとフェルトさんに説明しているんだけど、実際に目の前で術を使ってたのは初めてなんだ。
 本当はずっと使ってるんだけど、その説明はもっと後にするみたい。お父さんに許可をもらって、安全確保のできるアリアナお姉ちゃんの部屋で、いろいろと術を見せるつもりでいたところに、この騒ぎだからね。
 
「えっと、アリアナさんが話していた、幻の神霊術ですか。すごいな。完全に俺の知らない美少年がいるんだと思って、ちょっと、その、不愉快になってました」
「いや、本当にすごいよ、アリアナさん。こんな術、聞いたこともない。チェルニちゃんといい、アリアナさんといい、お前のうちの姉妹はどれだけ優秀なんだ、マルーク」
「特殊な術だし、悪用するのも簡単だから、家族だけの秘密なんだ。お前たちは家族同然だし、心から信頼しているからな。一緒に秘密を守ってくれ、フェルト、ヴィド」
「もちろんです、お父さん。命に代えても守ります」
「いわれるまでもなく、俺も秘密を守るさ。俺にとっても、フェルトは息子同然だからな。アリアナさんも、もう娘みたいなもんだ」
 
 お父さんたち三人は、そうやって信頼を確かめ合っていたんだけど、途中でフェルトさんが首を傾げた。ようやく気がついたんだね、フェルトさん。
 
「あれ? でも、どうして少年の格好をしてたんですか、アリアナさん。あの、そういう姿も、その、すごく美しいんですが」
 
 いいながら照れちゃって、赤くなっているフェルトさんに、アリアナお姉ちゃんは、にっこりと微笑んで宣言した。
 
「だって、男の子になっていた方が、フェルトさんをお守りするのに都合がいいんですもの。守備隊の詰所にいらっしゃるとき以外、わたしがフェルトさんの護衛につきます。周りの人には、親戚の男の子が騎士見習いになっているんだって、説明してくださいね?」
「「はぁ!?」」
 
 フェルトさんと総隊長さんの声が、とっても綺麗に重なった。そりゃあ、そうだ。お花の化身みたいに可憐なアリアナお姉ちゃんが、守備隊の精鋭っていわれてるフェルトさんの護衛とか、冗談にしか聞こえないだろう。
 フェルトさんは、あっという間に顔色をなくして、アリアナお姉ちゃんに詰め寄った。
 
「いや、何をいってるんですか、アリアナさん。あなたを危ない目に合わせるなんて、できるはずがないでしょう。俺があなたの護衛につくなら、話はわかりますが」
「フェルトさんがお強くて、自分の身を守れることは知っています。でも、相手は貴族ですもの。どんな状況であれ、フェルトさんが剣を抜いたり、少しでも怪我をさせたりしたら、不利になってしまうかもしれないでしょう? わたしなら、無傷のまま捕まえられますよ」
 
 そういって、アリアナお姉ちゃんは、エメラルドみたいな瞳を輝かせた。
 
 アリアナお姉ちゃんに印をくれたのは、幻を司る神霊さんだけじゃないからね。お姉ちゃんなら、たしかにフェルトさんを守れるだろう。
 でも、わたし、その力をあんまり使わせないように、雀さんに見守っていてもらったんだけどな。
 アリアナお姉ちゃん、いや、アリオンお兄ちゃんは、もう止まりそうにないよ……。
 
 そんなとき、身体がぞわっとして、髪の毛が逆立つような感じがした。遠いところから、すごく強くて尊いものが、どんどんこっちに近づいてくるんだ。
 すっかり馴染んじゃった気配だから、すぐにわかった。これは、スイシャク様と紅い鳥だ。神威が二倍になってるから、畏れ多さも二倍になってる。きっと、ネイラ様からの手紙を持って、一緒に来てくれたんだね。
 
 さあ、わたしたちの反撃の始まりだ! まぁ、まだ一回も攻撃されてないんだけどね。


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