漫画家になりたかった新米編集者の話
こんにちは、opsol bookのヤナガワです。
たびたびnoteで恥を晒してきましたが、怯むことなく今回も積極的に過去を公開していこうと思います。
恥晒しの前に宣伝です。
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漫画家になりたかった小学生時代
人生で初めてファンレターを送った相手は、少女漫画雑誌『りぼん』や『マーガレット』で漫画を連載していた森ゆきえ先生。
きっかけは、叔母から貰った漫画の一冊、森先生の『めだかの学校』(集英社〈りぼんマスコットコミックス〉、全6巻)でした。
登場人物の一人である田中先生は、頭部が魚になっています。当時は、1巻の表紙に写る田中先生が怖くて、ホラー漫画だと思い込み距離を置いていました。
しかし、意を決して読んでみるとゴリゴリの4コマギャグ漫画。怖いくらいにハマりました。どれくらいハマったのかというと、田中先生に恋をして、自作のファンブックを作るくらいです。現物はこちら。
これを作ったのは、小学3~4年生の頃だったと思います。田中先生の好きな食べ物はスルメなので、私はスナック菓子を差し置いて「おやつするめ」を間食に選ぶくらい、彼のことを意識していました。
昔から絵を描くことは好きでしたが、この頃から、漫画を読むだけではなく、描くことに挑戦し始めました。自由帳に描いていただけで、特に賞への応募はしていません。それでも、あの頃の私は「いつか漫画家になれたらいいな」と思っていたのです。
ここで先にお伝えしておきますと、今回のnoteは漫画家を目指し紆余曲折があった人生を語るものではありません。
前述のとおり、過去の恥を大公開しちゃおうスペシャルです。
ということで、ツッコミどころ満載の自作漫画の一部をこちらでご紹介します。
今回は、未完の作品も含め3作を引っ張り出してきました。
登場人物の名前が思いつかず、当時のクラスメイトの名前を拝借しているため、キャラ名は伏せてお送りします。タイトルも恥ずかしいのでモザイクをかけています。ご了承ください。
作品紹介
【1作目】
カップルとして幸せに過ごしていたA子とB男の前に現れたのは、B男の許嫁だというC子。さらに、親の再婚によりA子とB男は義理の兄妹になる。B男とC子の婚約の話が進んでも、A子とB男の気持ちは変わらなかった。それに嫉妬したC子は、背後からA子に近付きシャベルで頭部を殴打。最終的に、B男はC子と結婚するも、A子とも恋人関係を続けていくという、今読むとB男がどっちつかずで最低な話。デビュー作(仮)。
服装に時代を感じますね。次のコマはこちらです。
私は生まれも育ちも三重県なので、「~しんさい」という方言を使ったことはないです。山陽方言の使い手の皆さま、知ったかぶってすみません。
ちなみに、このA子の父親の再婚相手が、B男の母親です。ここからA子とB男は義理の兄妹になります。
一番のお気に入りシーンです。なんという作画の適当さ。首から下を描く気0です。キメ顔で「ふろ…入れよ…」と溜めているのもなんだか腹が立ちますね。
前のページでB男におでこコツンをされて舞い上がっているA子ですが、それだけ発熱していればさすがになんらかの症状が出るはずです。「なんでー」と言っている場合ではない。
「←おちてた」で解決するようなことではありません。室内の階段にシャベルが落ちていることは、そうそうないと思います。そもそも傷害罪です。
感動的なシーンですが、各コマに執拗に書かれている車のエンジン音が気になって仕方がありません。車が動いていることを表現したかったという意図だけは伝わってきます。ブブブ…ブーン。
C子と結婚したにもかかわらず、A子との関係も続けているB男。C子はこの状況を易々と受け入れていますが、現場を押さえているなら何かしら手を打たないと。しかも、なぜかB男は10日後に海外へ旅経ちました。
この後、A子とC子はモデルデビューを果たし、とある日の撮影に、帰国したB男がカメラマンとして参加。物語はハッピーエンドを迎えます。改めて読み返すと、全くハッピーではありませんでした。
【2作目】
幼馴染で家が隣同士のD子とE男。喧嘩が絶えない二人だが、実はお互いを想い合っている。ある日、それぞれの自宅でしばらく親戚の子どもを預かることに。そのことをきっかけに、さらに二人の距離は縮まっていく。
そんな中、二人の前にD子の許嫁だというF男が現れる。初めは親の言いなりだったF男も、次第にD子に惹かれていく。未完の作品のため、結末は不明。
表紙にメモすな。
この時、祖母の家でテレビを見ながら描いていたので、その影響だと思います。語感が気に入った著名人の名前+テレビで流れていた曲をメモしたのでしょうか。
D子がシリアス(多分)なセリフを言っている大事なシーン。男子の制服はブレザーのはずなのに、なぜかこの次のコマから学ランになります。学ランが描きたくなった欲望を抑えきれず、右上に注釈だけ入れて済まそうとしているのがバレバレです(しかも、次の1ページだけ学ランを描いて、その後はまたブレザーに戻しています)。
1作目しかり、許嫁設定好きすぎか。
当時、水上航先生の『メガネ王子』(講談社〈講談社コミックスなかよし〉、全4巻)にハマっていたので、その影響を受けてメガネ男子が登場しています。
父22歳、母25歳。D子の年齢は15歳です。
単純に考えると、父が7歳、母が10歳の時の子ども。いやいやいやいや。
無知だった私は、登場させるなら若い方がいい! と考えたのでしょう。職業も俳優とモデルにしていますね。盛りすぎです。
心中すな。そんで惚れ惚れとすな。
「集中してる」と書きたかったのでしょうが、漢字が思い出せず最悪の誤字に。ちなみにこのシーンは授業中なので、集中しているD子がすごいわけではなく、E男、お前が集中しろよとツッコみたいですね。
さらっと先生も「心中してたもんな」と謎の発言をしています。
なんで?
この話は2巻の途中で描くのをやめたので、未完のまま放置されています。最後のページに記されていたのは、テレビ番組の企画名。この企画が好きだったので、CMで見かけて「今度これやるんだ~」と思いながらメモしたのだと思います。
【3作目】
G子の親友だったH子は、不慮の事故により命を落とした。突然の訃報に悲しみに暮れるG子の前に現れたのは、H子と付き合っていたI男。互いが過ごしたH子との日々を語り、いつの間にか親密になっていく二人。そんな二人の前に、幽霊となったH子が現れる。「二人がそういう関係になると思っていた」と激高するH子は、ナイフを持ってG子に襲い掛かる。最終的に3人で写真撮影を行いハッピーエンド。
豆知識として、「幽霊界の人用ナイフとは、物が触れない幽霊でも触れる(持てる)ナイフなのだ」と書かれています。こんなにシリアスなシーンなのに、豆の絵と共に。
また都合の良い物が登場。典型的なフォルムの幽霊が描かれたカメラです。「OKだよ」と言っているので、幽霊も一緒に撮影できるのでしょう。
トリプルウインク(右目!)!?
幽霊も写るカメラで撮った写真です。当時の思考が、今の私にはまったく理解できず、どうしてこうなったのか解説することもできません。トリプルウインクだけでも「?」なのに、(右目!)のパワーが強すぎて。
一番右の子がH子(幽霊)なのですが、せっかく写真を撮るならH子をセンターにしなよとあの頃の私に言いたいです。
10年以上経った今
以上、恥晒しスペシャルでした。
この漫画を読んだことがあるのはこの世で二人。私の従兄妹だけです。あの頃楽しく漫画を描けていたのは、読んでくれる人がいたからだと思います。
当時描いていたような漫画は描けないし、もう漫画家を目指しているわけではないけれど。
10歳の私の夢は形を変え、今、こうして本づくりに関わることができています。そして、過去の自分が元となり、この記事が生まれました。
最後に、あの頃の私に伝えたいことがあります。
好きになった時にはすでに連載が終了していた森先生の『めだかの学校』、なんと2015年に『めだかの学校 2限目!』として帰ってくるよ~!
▼小説賞開催までの道のりはこちらにまとめています。