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連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 37通目

レフ・ティルグ・ネイラ様

 今日の晩ご飯は、すごい大人数だったんですよ、ネイラ様。(何だか、いつも食べ物のことばっかり書いている気がして、年頃の少女としては、ちょっと恥ずかしいんですが、今日は違いますからね!)

 わたしの大好きなお父さんとお母さん、アリアナお姉ちゃん、フェルトさん、総隊長さんっていう、キュレルの街の人たちに加え、ヴェル様とヴェル様の部下の人が三人。そして、ネイラ様が派遣してくれた、王国騎士団の騎士さんが、三人も参加してくれたんです。
 もちろん、お父さんの料理が大のお気に入りになった、スイシャク様とアマツ様も一緒でした。数えてみると、総勢十三人と二柱ふたはしら
 うちは食堂を経営している家なので、どうっていうことはありませんが、普通のお家だったら、パーティーっていってもいいくらいの規模ですよね。

 その食事の間に、わたしは、すっかり皆さんと仲良しになりました。多分、すごく偉かったり、身分が高かったりする方々だと思うんですけど、皆さん、とっても優しくて丁寧なんです。十四歳の平民の少女を相手にするには、ちょっと紳士的すぎるくらい。これって、やっぱりネイラ様のお陰ですよね?
 人格的に優れていて、親切で、能力の高い方を選りすぐって、うちに派遣してくれたんじゃないかなって、勝手に納得しています。本当にありがとうございます。

 王国騎士団のお一人で、一番上司っぽいのが、マルティノ・エル・パロマ様。他のお二人は、〈大隊長〉って呼んでいました。とっても落ち着いていて、優しそうなんですけど、多分、ものすごく仕事のできる方ですよね? 堂々とした余裕を感じるので、そうなんじゃないかって思います。
 ちょっとだけ、キュレルの守備隊の総隊長さんに似ているのは、どっちも〈お父さんっぽい〉からでしょうね。頼り甲斐がいがありそうで、まとっている雰囲気が暖かいんです。見た目的には、厳つい熊みたいな総隊長さんと、貴族的な美丈夫びじょうぶのマルティノ様は、あんまり似ていませんけどね。(この〈美丈夫〉っていう言葉、生まれて初めて使いました。何だか嬉しいです)

 一番若い美青年が、リオネル・セラ・コーエン様。年齢的には、フェルトさんと同じくらいでしょうか? かなりの美青年なのに、堅物かたぶつっていっていいくらい真面目そうな雰囲気が、フェルトさんにそっくりです。
 リオネル様のお父さんは、王城の近衛騎士団の騎士だそうで、クローゼ子爵家のことを、いろいろと教えてくれました。お父さんが近衛騎士団なのに、リオネル様が王国騎士団でいいんですかって聞いたら、黙って微笑まれました。何というか……凄みのある笑顔だったような気がするのは、なぜなんでしょうね?

 もう一人、マルティノ様と同じくらいの年齢の美丈夫その二が、シモン・ジガ・エデルマン様。この方は、優しい笑顔で冗談ばっかりいうので、わたしも楽しかったです。ネイラ様が怒ると、雷が落ちてきたり、豪雨になったりするのって、冗談……ですよね?
 シモン様のお家は、〈たまたま手持ちの山から銀が出たので、販路拡大のために男爵位を買い取っただけの商家〉だって話していました。うちの〈豪腕〉のお母さんと、意気投合しちゃったみたいで、二人で楽しそうに経営の話をしていました。
 騎士様なのにって思っていたら、財務担当なんですってね。今回の事件の中で、お金を動かす必要ができたときに、王国騎士団の財務を統括するシモン様がいれば、どれほどの額であろうと、使いたい放題だからっていうんですけど、これも冗談……ですよね?

 あれ? 騎士の方々の第一印象を書いただけで、規定の量になっちゃいました。(際限なく長い手紙を書きそうなので、一回の量を決めているんです、わたし) 続きは、次回に回しますね。

 では、また。次の手紙で会いましょう。ネイラ様のお話も、いろいろと教えてもらっているので、次回はそのことも書きますね。

     王国騎士団って、美男子じゃないと入団できないのかと疑っている、チェルニ・カペラより

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人を見る目にも長けている、チェルニ・カペラ様

 わたしの部下たちは、大変に恵まれた食生活を送っているようですね。定時に送られてくる報告書を読んでいると、さすがに少しばかりうらやましくなります。きみの様子を知らせてくれればいいのに、朝食と夕食のメニューを、丁寧に書いてくるのですから。

 あまりに羨ましいので、近い将来、両親を連れて〈野ばら亭〉にお邪魔しようと、心に誓いました。両親にそう話したところ、母は、大層喜んでくれました。
 ある意味、親不孝な息子でしたので、母が満面の笑顔を浮かべているのを見ると、複雑な気持ちになりますね。きみを見習って、両親に優しくしなくては。(父の方は、なぜか視線をらして、さりげなく話題を変えようとしていました。どうしたのでしょうね?)

 また、わたしの部下たちが、きみに良い印象を持ってもらったこと、とても嬉しく思います。わたしの自慢の部下であり、いずれも王国騎士団が誇る団長補佐官、通称〈副官〉ばかりですので、安心はしていましたが。

 マルティノは、わたしの副官であると同時に、王国騎士団の大隊長を務めています。(いわば、騎士団の次席ともいえる立場であり、本来は副官にはならない階位なのですが、絶対に副官の職を離れようとしないのです)
 文武両道に優れ、人格者でもあるマルティノは、王城では〈王国騎士団の円環えんかん〉と呼ばれています。すべてに欠けているところがない、という意味です。わたしにとっても、得難い副官であり、兄というものがいればこうなのではないか、と思うこともあります。気恥ずかしいので、口に出したことはありませんが。

 リオネルは、本当に生真面目な青年です。非常に女性に好まれるようで、わたしの耳にまで入ってくるほどなのに、婚約者以外の女性には、絶対に近づかないのだそうです。ただ、その婚約者と仲が良いかというと、それも微妙らしく……。
 真面目すぎる男というのも、それはそれで心配だと、他の副官たちが話していました。本人いわく、〈自分は不器用なので、すでに灼熱する真実を捧げている以上、恋愛を意識するような心の余裕がない〉のだそうです。
 リオネルは、王国騎士団の職務に、そこまでの熱意を感じているのでしょうか? 事件が終わったら、一度、マルティノに聞いてみた方がいいかもしれませんね。

 シモンは、王国騎士団の財務を差配する責任者です。数字に関しては、天性の才能を有しており、王城の財務官をもしのぐ力の持ち主だといえるでしょう。正直なところ、王国騎士団の財務官としては、過剰な戦力であり、なぜ財務総省に奉職しないのか、多くの者たちに不思議がられています。
 わたし自身は、いくつかの思惑が働いた結果、シモンが副官になってくれたことを、幸いだと思っています。計算高く、辛辣しんらつな表情の裏には、少年のように純粋な心を隠し持っている男なのです。

 わたしの方も、部下の人となりを紹介し切れないうちに、〈定量〉になってしまいました。また、次の手紙で会いましょうね。

     この手紙を書きながら、初めて部下と向かい合った気がする、レフ・ティルグ・ネイラ

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