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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 4-37

手負ておいのけものごとく也〉 
〈崩れゆく廃墟とも見ゆ〉
 
 スイシャク様とアマツ様から、そう形容されたオルトさんは、うずくまっていた床から立ち上がり、今にも崩れ落ちそうな足取りで、証言台へと歩いていった。被疑者の席から証言台まで、距離にしたらわずかなのに、見ているわたしたちにとっても、オルトさん自身にとっても、遠くに感じられる歩みだった。
 〈神秤しんしょうの間〉に入ってきたときから、痩せてやつれて、別人のようになっていたオルトさんは、もう重病人にしか見えなかった。自分の息子であるアレンさんと、弟であるナリスさんが、ミランさんの策略によって魔力を吸い取られ、おじいちゃんになっちゃった衝撃は、オルトさん自身にも、取り返しのつかないほどの痛手になったんだろう。
 
 〈神秤の間〉に集まった傍聴の人たちは、息を殺して、オルトさんを見つめている。ふらりふらり、ゆらりゆらりと、まっすぐ歩くこともできないオルトさんから、言葉にできない〈何か〉が立ち上っていて、目をらせられないんだよ。
 深いしわを刻み、たった数分の間にも肉の落ちた顔の中で、オルトさんの瞳だけが、異様なほど輝いている。スイシャク様とアマツ様のいうように、それは〈手負いの獣〉が、力を振り絞ろうとするときの、最後の力なのかもしれなかった。
 
 誰の助けも借りず、ようやく一人で証言台にたどり着いたオルトさんに向かって、どこか悲しげな声で、マチェク様がいった。
 
「では、被疑者の尋問を開始する。よろしいな? 先ほど、バルナ殿にも申した通り、そなたは現在、元の身分を凍結されているゆえ、名のみを繰り返す。元はクローゼ子爵であったオルト殿。そなたは、今回の告発において、主犯ともいえる立場にあることを自覚しておられるか?」
 
 マチェク様に問いかけられたオルトさんは、微かに震えている手で証言台をつかみ、爛々らんらんと光る瞳で、ご神秤をにらえてから、はっきりと答えた。今にも倒れそうな様子からは、想像もできないほど、強い声だった。
 
「ええ。もちろん。わかっておりますよ、猊下げいか。わたしは、この一連いちれんの事件の主犯で、〈神去かんさり〉の大罪人ですとも。だからどうした、とは思いますがね」
「……よろしい。ならば、重ねて問おう。そなたをはじめとするクローゼ子爵家の者たちは、〈神去り〉になったことによって、王家より決断を迫られた。〈神去り〉ではない血縁者にクローゼ子爵家の家督かとくを譲るか、王家が指名する養子を受け入れて、クローゼ子爵家を継がせるように、と。そうであったな、オルト殿?」
「そうです。王家からは、そのように命じられておりました。〈神去り〉になったから、当主の資格を失うとは、誠に理不尽な話です。神霊王国と名乗ろうと、我が王国は、人が治める国でありましょうに」
「王家からの御下命ごかめいの是非は、我らが論ずるところにあらざる故、返答は差し控える。その後、御下命を受けたそなたらは、亡きクルト・セル・クローゼ殿が子息、フェルト・ハルキス殿を養子とし、そなたらの傀儡かいらいとするべく、動き始めたのであるな?」
「そうです。王家の選んだ養子など、貴族家の乗っ取りに過ぎませんからな。クルトが平民の女に生ませた息子でも、幾分いくぶんかはましでしょう。我が娘のカリナと婚姻させれば、クローゼ子爵家の実権は確保できると考えたのです。貴族としては、実に当然の判断ですよ」
「しかし、フェルト・ハルキス殿は、地位にも名誉にも惑わされず、そなたらの申し出を断固として拒否した。それに困惑し、打つ手を失ったそなたらは、フェルト殿を誘拐して殺害し、フェルト殿の婚約者であるアリアナ嬢と、アリアナ嬢の家族までも、焼殺しょうさつしようとした。アリアナ嬢の生家せいかが営む、宿屋と食堂に集まっていた、百人を超える人々を巻き添えにして」
 
 神聖な神前裁判の場で、裁判官であるマチェク猊下の口から語られると、元クローゼ子爵たちがやろうとしていたことって、本当に残虐っていうか、冷酷っていうか、血も涙もない犯行だと思う。未遂になったから良かったけど、わたしたち家族なんて、〈野ばら亭〉のお客さんごと、焼き殺されるところだったんだから!
 傍聴席の人たちも、動揺を抑えられなかったんだろう。〈神秤の間〉のあちこちで、小さなざわめきが起こり、オルトさんに注がれる視線が、いっそう冷たくて厳しいものになっていったんだ。
 
「そなたらは、何故、そこまでの蛮行ばんこうに手を染めようとしたのか。確たる理由を述べられよ」 
「フェルトと関係のある者、フェルトを知る者を消し去れば、代わりの誰かをフェルトと言い張れますからね。平民一人が消えたところで、大した問題ではないでしょう。貴族というものは、家を存続させるためであれば、人を殺すことさえいとわぬもの。それだけのことですよ、猊下」
「認めるのだな、オルト殿? 百人余の人々を殺害しようとした事実を」
「ええ。そう申しております。わたしが認めなくとも、結果は変わらないのですから、言い逃れをしても意味がありませんでしょう」
「……では、もう一つの大罪についても、話してもらおう。そなたは、ルーラ王国の子供らを、奴隷として他国に売るための手引きをしたのか、オルト殿?」
 
 マチェク様が尋ねた瞬間、今日だけで何度目かもわからない衝撃に、〈神秤の間〉が揺れた。フェルトさんたちの告発で、元クローゼ子爵たちの罪状はわかっていたし、子供たちを誘拐する手引きをしたことだって、明らかになっていたんだけど、マチェク様から改めて問いかけられると、その罪の深さが、現実のものとして感じられるようだった。
 オルトさんは、すぐには答えず、被疑者席の方に目を向けた。そこにいるのは、椅子に座ってうずくまっている、元大公騎士団長のバルナさんと、洞窟どうくつみたいにうつろな目をした、元大公の二人だけ。オルトさんは、元大公騎士団長には目もくれず、元大公だけを見つめている。許しをうようでもあり、別れを告げるようでもある、悲しい眼差しだったと思う。
 
 〈神秤の間〉に連れてこられてから、元大公は、一言も口を開いていない。ミランさんが逃亡し、魔力を奪われたナリスさんとアレンさんが、すごいおじいちゃんになっちゃったのを間近で見ても、顔色一つ変えず、魂が抜けたみたいな顔つきで、ぼうっと座っているだけだった。
 今、オルトさんに、強い思いのこもった目で見つめられても、元大公は、やっぱり反応しなかった。暗くよどんで、ゆらゆらと揺れている瞳は、壊れかけた人形みたいで、この世ではないどこかに、魂がとらわれているようにも見えた。
 
 オルトさんは、大きく息を吐いて、元大公から視線を引きがした。それと同時に、〈手負の獣〉の凶暴さを漂わせていたオルトさんは、傲慢ごうまんに顔を上げて、尊いご神秤を睨みつけた。まるで命を燃やしているような、激しい瞳で……。
 
「もう一度、問おう。そなたは、ルーラ王国の子供らを、奴隷として他国に売るための手引きをしたのか、オルト殿? 極めて重大な嫌疑けんぎである故、しかと心して答えられよ」
「そうですよ、猊下。わたしは、アイギス王国のシャルル・ド・セレント子爵と共謀し、ルーラ王国の子供らを、奴隷として売り渡す手助けをしました。孤児院にいる、身寄りのない子供たちばかりです。ルーラ王国では、奴隷制は禁止されておりますが、他国ではいくらでもある話ですよ」
「……。いつ頃からだ? そなたは、いつ頃から、大罪に手を染めていたのだ? 近衛騎士団の精鋭にして、将来は近衛騎士団長に任ぜられる可能性すらあった、オルト殿が」
「ほんの数ヶ月前ですよ。セレント子爵らは、それまでも密かに誘拐を繰り返していたようですが、わたしが手助けをしたのは、我らが〈神去かんさり〉になってからです。それまでも、気がついていなかったかと聞かれると、微妙ではありますが」
「そなたらが、子供たちの誘拐に加担した故、〈神去り〉となったのではないのか?」
「逆ですよ、猊下。我らは、ある日いきなり、理由もわからずに、神霊術が使えなくなったのです。そのときの驚きと失望と怒りは、〈神去り〉になった者にしかわからないでしょう。わたしは、神霊の理不尽に怒り、神霊の力を借りずとも、強い力を持てる道を探しました。子供たちの誘拐の手引きをしたのは、そのためです」
「もう少し詳しく、動機を述べられよ」
「この世界において、神霊術などを使っているのは、ルーラ王国だけであり、すべての他国は、魔術を使っています。そして、わたしたちの身の内にも、確かに魔力がある。手助けをしてくれる者さえいれば、神霊術より強い魔術を使うことも、〈神去り〉の事実を隠すこともできると思ったのです」
「その〈手助けをしてくれる者〉が、恥ずべき誘拐犯であるセレント子爵であったと、そういうのだな、オルト殿?」
「ええ。わたしたちは、神霊術を捨て、魔術を選んだ。セレント子爵は、魔術を得るための道具であり、誘拐された子供たちは、セレント子爵を動かす〈えさ〉だったのです」
 
 誘拐された子供たちは、ただの〈餌〉。オルトさんは、暗い微笑みを浮かべたまま、はっきりとそう答えたんだよ……。
 
     ◆
 
 オルトさんの証言を聞いて、〈神秤の間〉は、重苦しい沈黙に包まれた。神霊王国の貴族で、何人も近衛騎士団長を出してきた家門かもんで、〈騎士の中の騎士〉って呼ばれているマチアス様の息子だと思われてきた人が、堂々と大罪を告白したんだから、貴族がほとんどの傍聴席が、しんと静まり返っちゃうのも、当然といえば当然だろう。
 そして、マチェク様を始めとする神職さんたちも、揃って険しい顔になっていた。犯した罪があまりにも重いし、動機が自分勝手だし、神霊さんたちに対しても不敬すぎる。温厚で徳の高いコンラッド猊下まで、遠目に見てもわかるくらい、冷たくて厳しい目を向けているんだ。
 
 マチェク様は、必死に怒りを押し殺しているような表情を浮かべながら、それでも、落ち着いた静かな声で質問を重ねた。
 
「そなたの罪の深さは、尊き御神霊がご存知であろう。ここは神前裁判の場であれば、わたしから申すべきことはなき故、話を続けよう。子供らをさらう手助けをしていたのは、そなた一人であったのか? そもそも、そなたがセレント子爵と結びついたのは、如何いかなる成り行きであったのか? 誘拐された子供らの行方について、何と聞いているのか? そなたが知る事実を、すべて述べられよ」
 
 淡々としているのに、まるでむちで打つようなマチェク様の言葉に、オルトさんは、一瞬だけ目を伏せた。自分を恥じているのか、開き直っているのか、やっぱり元大公をかばおうとしているのか、痩せてやつれていても、尊大さを感じさせる横顔からは、オルトさんの気持ちを読み取ることはできなかった。
 
 一つ、深い息を吐いて、オルトさんは、説明を始めた。アイギス王国の外交官であるセレント子爵と、近衛騎士団のオルトさんは、王城で顔を合わせたのをきっかけに、交流を持つようになったこと。セレント子爵は、初めからルーラ王国の子供たちに目をつけていたし、神霊術っていうものに懐疑的かいぎてきなオルトさんは、魔術について知りたいと思っていたこと。〈神去り〉になってしまって、困っているときに、誘拐の手伝いをしてくれたら、魔術を教えようといわれたこと。魔術が使えるようになったら、〈神去り〉の事実を隠せると考えたこと。拐われた子供たちのその後は知らないし、興味もなかったこと。誘拐の手伝いをした代償に、魔術触媒をもらっていたこと……。
 
 子供たちの誘拐については、主に守備隊の妨害をしていたらしい。セレント子爵たちが、子供たちを拐った後、それぞれの街の守備隊が、〈深追い〉してこないように、元クローゼ子爵が釘を刺していたらしい。〈重大事件なので、近衛が追っている。街の守備隊は、ほどほどに〉っていえば、誰も何もいわなかったらしい。
 キュレルの街の場合は、あまりにも犯人を追うのが早過ぎて、圧力をかける暇もなかったっていわれて、わたしは、ちょっとだけ誇らしかった。少なくとも、キュレルの街から拐われた子供たちだけでも、助け出せたしね。
 
 何一つ隠してなんかいませんよっていう口調で、オルトさんは、次々に真実を暴露していった。傍聴席の人たちは、その度に息を呑み、オルトさんの言葉に引き込まれていく。ある意味、オルトさんが〈神秤の間〉の空気を支配しているようにも見えるんだけど、わたしには、気づいたことがあった。オルトさんってば、ものすごく上手に、元大公の関わりをぼやかしているんじゃないの?
 オルトさんは、セレント子爵だけじゃなく、アイギス王国そのものとつながっていて、証拠となる書類だって、マチアス様の手で見つけ出されている。父上、父上って、元大公を慕っているオルトさんが、元大公にも内緒で、そんなことをするんだろうか? そもそも、アイギス王国だって、元大公の存在があるからこそ、オルトさんと接触したんじゃないんだろうか?
 
 わたしが、ぐるぐると考えていると、裁判官役のマチェク様が、オルトさんに鋭く質問してくれた。
 
「そなたの証言は、率直なものに思われる。ただ、元大公であるアレクサンス殿の関与については、不十分な発言に終始しておろう。改めて問う。元大公アレクサンス殿は、フェルト殿の殺害計画やアリアナ嬢ご家族の襲撃計画、さらには子供たちの誘拐とアイギス王国との関係において、どのような役割を果たしたのか、つぶさに述べられよ、オルト殿。この場は、世の常にはあらぬ神前裁判。如何なる偽りも、意味をなさぬと知った上で証言されるよう、強く望む」
「……答えませぬよ、猊下」
「証言を拒否なさるのか? 黙秘は肯定と同義と、そなたも理解しておろう? すべてを告白すれば、罪が軽くなる可能性もあるものを」
「他国の手引きをして、自国の子供たちを誘拐させ、奴隷に売っていたのですから、外患誘致罪がいかんゆうちざいでしょう。そして、外患誘致罪は、処刑の一択いったく。罪が軽くなる要素など、どこにもありませんよ、猊下」
「それは、人の世の刑罰であろう? わたしがいうのは、神の世の裁きであり、魂の罪業ざいごうであるよ、オルト殿。現世うつしよの断罪の後も、神世かみのよの罰は続いていくのだから」
「……」
「話しなさい、オルト殿」
「……」
「オルト殿?」
「黙秘します」
 
 それまでも暗い炎を宿していた瞳を、ますます爛々らんらんと輝かせ、オルトさんは、せきを切ったように口を開いた。わたしには、なぜか、たまらなく痛々しく聞こえる、怒りの声で。
 
「たとえ結果が同じだとしても、自らの罪を軽くするために、父上を裏切ることなどいたしませんよ。死後の裁き? 魂の罪業? 上等ですな。無慈悲な神が、わたしを裁くというのなら、好きにすれば良い。そもそも、わたしたちを追い詰めたのは、〈尊い御神霊〉とやらではないか。なぜ、与えられる力に差があるのだ? いかに努力をし、心から求めようと、加護を得られぬ者の気持ちが、神霊になどわかるものか! 強い印、こいねがった加護を持つ者と、持たぬ者の差はどこにある? 〈神去り〉もそうだ。不正義をなす者でも、〈神去り〉にはならぬではないか。わたしたちは? わたしたちは、何故〈神去り〉になどなったのだ? 傲慢で不平等で気まぐれな神霊に、人の世、人の心の何がわかる? ふざけるな!」
 
 オルトさんの言葉は、叫びのようだった。そこまで声を荒げたわけじゃないのに、強く、激しく、〈神秤の間〉に響き渡ったんだ。あまりの不敬、あまりの開き直りに、オルトさんに厳しい視線を注いでいる人も多かったけど……それだけじゃなかった。
 同情のようでもあり、哀れみのようでもあり、もしかしたら、共感なのかもしれない、複雑な視線が、〈神秤の間〉を埋め尽くした傍聴席の人たちの中から、確かにオルトさんへと向けられているんだよ。
 
 わたしは、どうしてだか、王太子殿下のんだ歌を思い出した。王城の宰相執務室で、大神使だいしんしであるコンラッド猊下のいる前で、王太子殿下は平然と口にしたんだ。〈神去りて 開けゆくちょうこそ 目出たけれ 神は神の世 人は人の世〉って、神霊さんたちへの決別とも取れる歌を。
 中央の貴賓席に目を向けると、ルーラ王国の王太子殿下は、悠然ゆうぜんと微笑んでいた。何を考えているのか、まったく感情の読めない微笑だったけど、その瞳はきらきらと輝いて、どこか満足そうな気がするよ。
 
 どこか騒然とした空気を払うように、マチェク様が、小さな金槌かなづちを大机に打ちつけ、澄んだ音を響かせたところで、一切の前触れもなく、唐突とうとつに、そのときは訪れた。わたしたちの頭上高く、遠く遥かな天空で、一柱ひとはしら神威しんいが渦を巻き、わたしと神世とをつなぐ回路をつたって、まっしぐらに降り注いできたんだよ!
 ぐらぐらと揺れる頭の中で、金色に光り輝く〈言霊ことだま〉が鳴り響いた。〈結縁けちえんしたる雛ならば、我が器ともなりぬべし〉〈いざ、我も語らん〉って。金色の神威は、わたしの知っている金色こんじきの龍、誓約を司るクニツ様のものだった。クニツ様は、神前裁判で伝えたいことがあるって、わたしに〈器〉になってほしいって、以前からいっていたから、今がそのときなんだろう。
 
 そうと理解した途端、わたしの意識が薄くなっていった。わたし、チェルニ・カペラの自我っていうものが、どんどん希薄になって、大気にふわりと溶け出して……多分、身体が光り始めたんじゃないかと思う。自分であって自分ではなく、大きくて尊い何かに溶け込むような、何度体験しても、それは不思議な感覚だった。
 わたしの周りで、小さく自分を呼ぶ声がしたけど、今のわたしは、答えることができない。ぴかぴかと発光しながら、目の前の御簾みすに目を向けると、するするするする、勝手に御簾が巻き上がり……わたしの姿は、〈神秤の間〉にいるすべての人の目に、はっきりと映し出されたんだ。
 
 〈神秤の間〉のあちらこちらで、息を呑む音や、小さな悲鳴みたいな声が聞こえている。貴賓席の人たちも、目を見開いて、わたしの姿を見つめている。そんな中、十四歳のチェルニ・カペラじゃない、〈神託しんたく〉としてのわたしは、自分でもまったく意味のわからないまま、こういった。
 
「〈神託の巫〉たるわたくしは、やくを司りし御神霊、□□□□□□□□様の眷属けんぞくにござります。尊き□□□□□□□□様の御名ぎょめいにより、わたくしが□□□□□□□□様の依代よりしろとなり、言霊をたまわりまする。皆々、心してお聞きあれ」
 

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