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口から咄嗟に大納言

こんにちは、opsol bookのヤナガワです。

毎日暑い日が続きますが、皆さま体調はいかがでしょうか?

こんなに暑いと、アイスクリームの一つや二つや三つや四つ食べたくなりますね。

アイスクリームのことを考えると、高校生の頃にあった出来事を思い出します。あれは確か、高校一年生になり、初めて友人と電車に乗って遠出をした日のことです。

訪れた商業施設の中で一際輝いて見えたのが、サーティワンアイスクリームでした。私の地元には存在しないアイスクリーム店です。さっぱり系から濃厚系まで品揃えが豊富で、どれか一つを選ぶという究極の選択に、私は頭を悩ませていました。頻繁に食べられるものではないので、ここは慎重に選びたいところです。

メニューとにらめっこをする私を見かねて、隣で一緒に選んでいた友人が言いました。

「こっちの期間限定のカップにする? アイスはミニサイズになるけど、これなら4つ選べるで!」

なんと、期間限定で好きなフレーバーを4種類選べる神カップが存在していたようです。多少アイスのサイズが小さくなろうとも、その分多くの種類を食べられるのならば、もちろん私はこちらを選びます。

そうと決まれば、これから私の胃の中に迎える4種類のアイスちゃんを選んでいきましょう。

まずはストロベリー系。これは絶対に外せません。バナナアンドストロベリーやストロベリーチーズケーキも捨てがたいですが、ここは王道(多分)のベリーベリーストロベリーでいきましょう。食に関してはミーハーなので、人気の高いメニューには手を出しておきます。

2種類目は、前にテレビで見てから、ずっと食べたいと思っていたラブポーションサーティワン。こちらはラズベリーとホワイトチョコのフレーバーらしく、その中に入っているハート型のチョコレートが魅力的です。

チョコ系も捨てがたいですが、もう一つくらいフルーツ系のアイスでもいいかも。ちなみに、好きなアイスの味ランキング(ヤナガワ版)では、第2位にメロンがランクインしています。よし、ここはマスクメロンでいきましょう。

残るは一枠は、サーティワンアイスクリームの名前を聞くと必ず私の脳内に思い浮かぶ商品。そう、ポッピングシャワーです。正直、私はあまりミント系のスイーツが得意ではないのですが、当時はポッピングシャワーがミント系のフレーバーだと思っていませんでした。このフレーバーを選んだ理由はただ一つ。ポップロックキャンディのパチパチ感を味わってみたかったからです。最後の一つも決まったことですし、いよいよ注文です。

そういえば、メニュー表を見ながら、興奮したことが一つあります。

私は、漫画のジャンルの中でも、ギャグ漫画を好んで読むのですが、中でも増田こうすけ先生の『ギャグマンガ日和』にどっぷりハマっている時期がありました。

『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』(増田こうすけ/集英社)
現在は、ジャンプスクエア(集英社)にて『ギャグマンガ日和GB』を連載中。

今でも鮮明に思い出せるエピソードは、7巻に掲載されている第128幕で、アイスクリームがネタになっています。詳しくは読んでいただければわかると思いますが、この話のキーワードは「大納言あずき」です。

私はこの話が大好きなので、当然メニュー表に大納言あずきの名前を見つけた時は口角が上がりました。友人にも「見て! 大納言あずきが!」と伝え、二人でキャッキャしていたことを覚えています。

そうこうしているうちに、前に並んでいた方の注文が終わり、私たちの番になりました。普段来ることのないお店での注文に緊張していましたが、店員さんは優しく誘導してくれました。

普段口にすることがない単語に少し羞恥心もありましたが、アイスを手に入れるには乗り越えなければならない壁です。ここは大きな声で注文してみましょう。

「えっと、マスクメロンと」
「はい! マスクメロン!」

「ベリーベリーストロベリーと……」
「はい! ベリーベリーストロベリー!」

「あーっと……ラ、ラブポーション、サーティワンと」
「はい! ラブポーションサーティワン!」

ベリーベリーストロベリーとラブポーションサーティワンという、キラキラしたフレーバー名を口に出したことで、私は羞恥心メーターがMAXになりました。なんか必殺技出しちゃったみたい……と意味の分からないことを考えながら、最後の一つを注文します。

「大納言あずきで!」
「はーい! 大納言あずきですね!」

ふう、何とか頼めました。ミッションを終え、先に注文済みの友人の所へ向かいます。

「ヤナガワさ、さっき何頼んだん?」
「え? メロンと、イチゴと、ハートのチョコのやつと、ポッピングシャワー」
「ポッピングシャワー?」
「うん、あのパチパチが食べたかったんよな」
「本当にポッピングシャワー?」

不思議なことに、私を見る友人の顔は、とんでもなくニヤニヤしていました。

なぜそんなにニヤついているのか。何もおかしいところはないはずです。私が頼んだのは、マスクメロン、ベリーベリーストロベリー、ラブポーションサーティワン、だいなご……大納言あずき!

もしかして私、ベリーベリーストロベリーからのラブポーションサーティワンのキュートすぎるネームコンボにライフが削られ、勢い余って大納言あずきを注文している!?

……いや、そんなことはあり得ません。私のカップには、グリーンとホワイトが輝くポッピングシャワー入っているはず。あのパチパチも味わえるに違いありません。

「お待たせいたしました!」

店員さんからカップを受け取り、見てみると。

頼んでいますね、大納言あずき。

ただ、今考えてみると、これでよかったのかもしれません。もし私がポッピングシャワーを頼めていたとしても、ミントフレーバーを受け入れるには、私の胃ではまだ力不足だった可能性もあります。そう、むしろこれでよかったのです。

普段アイスを買う時に、積極的に小豆系を選ぶことはありませんが、落ち着いた甘みが癖になるおいしさで、ほかの3種類とはまた違った魅力がありました。頼んで正解だったな~、とウキウキでアイスを食べ進め、無事に完食。いい経験になりました。

ただ一つだけ。私はラブポーションサーティワンのハート型のチョコレートをとっても楽しみにしていたのです。「このチョコは最後にとっておこう」といくつかキープしていたのですが、最後の一口として残しておいたチョコを口に入れた瞬間、それがチョコではなく小豆だったと気が付いた時は、さすがにちょこっと落ち込みました。チョコだけに。


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