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神霊術少女チェルニ〈連載版〉

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『小説家になろう』で大好評連載中! 須尾見蓮先生による『神霊術少女チェルニ〈連載版〉』を、こちらからまとめて読むことができます。 ※本連載投稿は、『小説家になろう』に連載されてい… もっと読む
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記事一覧

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 4-2

 たった十四年の人生だけど、わたしは今、最大の決断を下したんだと思う。ルーラ王国の騎士団長で、〈神威の覡〉でもあるレフ・ティルグ・ネイラ様からの、きゅっ、きゅっ、求婚を受けるって宣言したんだから。    お母さんとアリアナお姉ちゃんは、わたしにぎゅうぎゅう抱きついて、歓声を上げている。〈良かったわね、チェルニ〉〈おめでとう〉〈幸せになってね〉って。まだ十四の娘が、こっ、こっ、婚約するって勝手に決めちゃったのに、一言も反対しようとしないのは、きっとわたしの気持ちを察していたんだ

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 4-1

 その日の目覚めは、とっても幸せなものだった。気持ちが満ち足りていて、ぐっすりと熟睡できて、ぬくぬくと暖かくて……。鎧戸の隙間から差し込んでいる、淡い光の色合いからすると、朝といえる時間じゃないのかもしれないけど。    薄っすらと目を開けると、左右の枕元に、紅白の柔らかな羽が見えた。清らかな純白の羽はスイシャク様、鮮やかな真紅の羽はアマツ様。大きな鳥の姿を取る二柱の神霊さんが、わたしにくっつくみたいにして、微かな寝息を漏らしているんだ。  秋も深まって、空気が冷たくなってき

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-38

 わずかに明るさの増してきた満月の夜空に、ネイラ様……じゃなくて、レフ様の声が、厳かに響き渡った。   「〈神威の覡〉とは、神々の一柱が、仮初に人の血肉を受けて、この現世に顕現した者。魂の本質は神であり、束の間、人として生きるもの。〈神託の巫〉は、神々に愛される資質を持った人の魂が、必要とされるとき、様々な加護を得て生まれた者。きみは、神と人とを繋ぐという、重き役目を持った神々の愛子ですよ、チェルニちゃん」    その言葉を聞いた瞬間、わたしは、大きく身体を震わせた。いろいろ

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-37

〈こんばんは、お嬢さん。やっときみに会えましたね〉    夜空に浮かぶ月の銀橋で、ネッ、ネイラ様にそういわれた瞬間、わたしは、たまらずに泣き出してしまった。いや、涙はとっくに吹き出していたんだけど、あまりの緊張と混乱に、とうとう声を出して泣いちゃったんだよ。思いっきり。  自分でも、あまりの態度に絶望しそうになったけど、ネイラ様は、呆れた顔を見せなかった。〈失礼〉って、一言声をかけてから月舟に乗り込み、わたしが座っている猫足の長椅子に、そっと腰かけたんだ。    魂魄だけだか

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-36

 王立学院の入試から三日後の夜、ぐっすりと寝入っていたわたしの耳に響いてきたのは、〈妙音〉としかいいようのない、綺麗な綺麗な音だった。鈴の音のようでもあり、鐘の音のようでもあり、水の音のようでもあり、風の音のようでもあり……。もし、月や星が音を出すなら、きっとこんな響きなんだろう。  その妙音が合図になったのか、気がついたときには、わたしは、ゆっくりと起き上がっていた。わたしの身体は、相変わらず寝台の上で眠っていて、〈魂魄〉だけが覚醒したんだ。    わたしにとって、身体から

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-35

 王立学院の入学試験が行われてから、ちょうど二日。わたしが、ひたすらのんびりしている間に、受験生たちの点数と順位が確定したらしい。本当だったら、正式な合格発表の日まで、結果は極秘にされるところなんだけど、推薦による特待生であるわたしには、特別に教えてくれるんだって。  真っ白なひげのおじいちゃん先生は、〈少しばかり、ご相談したいこともございますので〉って、言葉を濁していたから、何か早めに結果を知らせる理由があるんだろう。    筆記試験の手応えからいって、点数は良いと思う。皆

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-34

〈見よ、此れこそは神秘郷。神託の巫にのみ許されし、神の苑たる《斎庭》也〉    七柱の神霊さんたちが、思い思いの姿で顕現した空間に、スイシャク様とアマツ様の〈言霊〉が轟き渡った瞬間、わたしは、ふっと気が遠くなった。  王都の新しい家で、フェルトさんに〈神託〉を伝え、ぴかぴか発光しちゃったときと似ている。十四歳の少女であるわたし、チェルニ・カペラの自我が、どんどん薄くなって、大気に解けてしまいそうになったんだ。    わたしの魂の器では、スイシャク様とアマツ様のいう、〈斎庭〉を

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-33

 わたしが、元気良く公開実技をお願いすると、司会役の先生が、なぜか微妙な顔をした。そして、手元の名簿を見ながら、大きな溜息を吐いていったんだ。   「ああ、その、公開実技を希望するんだね、チェルニ・カペラ君?」 「はい! お願いします」 「……わかった。そうすると、あれだ。きみが公開実技を希望した場合、間近で見学したいと希望している方々がおられるのだが、かまわないかね?」 「見学ですか? ご父兄とは別ですか?」 「きみの父兄だと思ってほしいと、むちゃくちゃ……いや、強制的に…

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-32

 秋晴れの空の下、王立学院では、いよいよ神霊術の実技試験が行われようとしていた。神霊術の実技点は百点満点なんだけど、この点数は、受験の合否に直接は影響しない。ルーラ王国では、神霊術に優劣はないっていう考え方をしているから、合否を判断するのは、基本的には学科試験の点数なんだ。  だったら、どうして神霊術の実技試験を実施するかというと、優秀な人材を見逃さないようにするためなんだって。学科試験の合格定員とは別に、特に優れた神霊術を披露した何人かの生徒は、特別枠で入試に合格できるらし

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-31

 午前中の筆記試験を終えて、わたしは、保護者の控え室に向かった。大好きなお父さんたちが、お昼ご飯を用意して待っていてくれるはずだから、おいしいものをたくさん食べて、午後からの実技試験に備えるんだ。  保護者控室までの道順は、大きく矢印で表示されているから、すぐにわかる。お母さんとアリアナお姉ちゃんは、もう神霊庁から移動できたのかな……と、思いながら歩いていたら、控室が近づくにつれて、さざなみみたいな声が聞こえてきた。    〈誰だ、あれ?〉〈とてつもない美少女だよな〉〈誰の家

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-30

 わたしは、耳障りな声のする方に向かって、冷たい視線を投げかけた。そこにいたのは、やたらにきらきらした服を着た、同じ年頃の男の子だった。後ろにお付きの人っぽい子がいるから、多分、地方の貴族なんだろう。内部進学じゃない地方貴族の子たちは、平民と一緒に試験を受けるからね。  子どものくせに偉そうな態度からして、間違いないと思う。顔は……妙に赤い気がするけど、別にどうでも良いや。わざわざ立ち上がるのも面倒なので、わたしは、どっしりと椅子に座ったまま、男の子にいった。   「初対面の

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-29

 今朝は、見事な秋晴れだった。えいやって、元気良く起き上がって、出かける準備を開始する。今日は、わたしにとって大切な一日、ついに迎えた王立学院の入試日なんだから。  わたしの枕元では、真っ白でふくふくのスイシャク様と、真紅でつやつやのアマツ様が、微かな寝息を立てていた。〈神霊さんって、人の子みたいに寝るものなの?〉とか、〈わたしが起き上がっても、そのままなんだ……〉とか、疑問に思うこともあるけど、もう慣れちゃったし、可愛いから何の問題もない。ないったら、ない。  二柱に守って

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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-28

 王都への濃密すぎる旅を終えて、わたしの日常が戻ってきた。といっても、十日もしないうちに王立学院の入試があるから、のんびりしている暇はないんだけどね。    一日空けて、午後から町立学校に登校する。卒業学年のわたしたちは、授業はとっくに終了していて、今は卒業までの予備期間になる。高等学校を受験する人や、卒業試験で赤点を取っちゃった人は、毎日のように用意されている補習授業を受けているし、自宅で勉強したい人は、そうしても良いんだ。  わたしは、補修を受ける予定はないから、町立学校

連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-27

 初めての神霊庁訪問を終えた次の日、わたしたちは、王都を出発することになった。といっても、お父さんとお母さんの仕事は、まだ残っている。それも、王都に進出する〈野ばら亭〉の物件を決めるっていう、ものすごく重要な仕事なんだ。  フェルトさんと総隊長さんは、マチアスさんのところへ行ってから、王国騎士団にご挨拶に行くそうで、今朝からは別行動になった。王国騎士団って聞いて、わたしが、ぐらぐらに動揺しちゃったのは、仕方のないところだろう。一応、こっ、恋する少女なのだ、わたしは。    気