フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-9
05 ハイムリヒ 運命は囁く9 約束
召喚魔術の術式を破壊した直後、真実の間に立ち|竦み、星灯さえない虚無の夜空を見詰めていたアントーシャは、ゲーナの死と同時に出現した光球の軌跡を、絶望の眼差しで追っていた。微かに瞬く淡い黄色の光球は、人の身体を司る〈魄〉である。壮絶に四散したことによって、司るべき身体を失ったゲーナの魄は、瞬く間に微かな光さえも消し去り、何処とも知れない空に融けていった。人ならぬアントーシャの霊眼には、ゲーナの魄が身体としても記憶を失い、新しい熱量体とし