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【第2回ハナショウブ小説賞】授賞式を開催しました!

2024年4月6日(土)に、三重県伊勢市にて第2回ハナショウブ小説賞授賞式を開催しました。

当日は、5名の受賞者様に出席していただきました。

〈opsol部門〉
●大賞 小川おがわ マコト様
●銀賞 ウダ・タマキ様
●opsol book賞 本多ほんだ あにもる様

〈テーマ部門〉
●大賞 九津ここのつ 十八とおよう
●銀賞 目白めじろ 成樹しげき様 

テーマ部門 opsol book賞 川屋かわや 幹大かんだい様は、お仕事のご都合で欠席となっております。

▼第2回ハナショウブ小説賞 最終結果発表はこちら

◆受賞者挨拶(opsol部門)

〈大賞〉『走れ!スーパー茜号』小川おがわ マコト様

〈受賞コメント〉
この度はopsol部門の大賞に選んでいただき、ありがとうございます。この作品は、移動スーパーの運転手が主人公のお仕事小説であると同時に、地縁について描いた物語です。私は、「毒親」や「親ガチャ」という言葉を、あまり好ましく思っておりません。血縁に恵まれなくても、生きる場所を変えたり、考え方を変えたりすることで、別の縁のギフトがあると、そういう希望を書かせていただきました。

書籍化にあたりまして、opsol bookの皆さまのお力をお借りして、家族関係に悩んでいる方たちを始め、より多くの方たちに届くよう、全力を尽くしてまいります。ありがとうございました。

〈銀賞〉『かすみ荘に暮らす人たち』ウダ・タマキ様 

〈受賞コメント〉
この度は素晴らしい賞をいただきまして、本当にありがとうございました。今回の小説は、昔ながらの「かすみ荘」というアパートで過ごされている利用者さんとケアマネジャーの関わりを描いた物語です。

私自身がケアマネージャーの仕事をしており、物語自体はフィクションではありますが、登場している利用者さんは、実際に関わった方たちを元に執筆いたしました。

私が働く地域では、単身高齢者の方や町全体の印象、生活保護など、ネガティブなイメージが付きまとうこともありますが、実際に利用者さんと1対1でお話をすると、色々な人生、ドラマティックな人生を歩まれてる方が多くいらっしゃいます。そういった方々のお話を聞いて小説にすることができたらなと思い、この小説を執筆いたしました。

作品自体は5、6年ほど前に書き上げていましたが、しばらくは寝かせたまま、手つかずの状態でした。今回、どこかに応募しようと考えていたときに、ハナショウブ小説賞を見つけ、応募を決めました。応募にあたり、主催している会社について調べてみると、会社が伊勢市にあると知りました。私自身が三重県出身で年に3回、4回は帰省しており、伊勢市周辺もすごく縁のある地域ですので、そういった場所でこのような賞をいただき、授賞式に参加させていただけましたことを、心から感謝申し上げます。この度はありがとうございました。

〈opsol book賞〉『暁号 国道九号線ルートナインを爆走中』本多ほんだ あにもる様

〈受賞コメント〉
私は看護師、保健師として臨床で仕事をした後、今は看護師の後進育成、教育に当たっております。小説とはあまり縁のない生活を送っていましたが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、小説を読んだり書いたりするようになりました。

コロナ禍により、医療系の学校現場は非常に大変でした。そういった状況の中で、小説を読むようになり、書き始めるに至りました。今はまだまだ勉強中ですが、このような賞を頂き、非常にうれしく、そして励みになりました。ありがとうございます。

今回の小説は、認知症の高齢者の方が主人公です。実は、この主人公にはモデルの方がいます。トラックの運転手の方で、重度の認知症により、会話や意思疎通が難しいのですが、トラックの話になるととても活き活きとされるんです。

あるとき、会話の中でその方が仰いました。
「あんな、わしトラック好きやねん。特に好きなんがな、トラックステーションやねん」
「見てみ、車バーっと並んどるやろ」
「向こうに山見えるやろ、朝日綺麗やねん。夕日もめっちゃ綺麗やねん」「わし、ここが好きやねん」
そう話しながら、白い壁を指差していました。それを見て、私にもその方の目の前に広がっている風景が見えたような気がしました。認知症の方は色んな世界をお持ちです。大変な部分も多いですが、幸せな思い出の中で過ごしておられることもあると常日頃から思っており、まさにそれを実感しました。この経験や思いを小説に書けたらなと思い、この作品を仕上げました。まだまだ課題はありますが、これからも高齢者の看護、そして認知症の方の世界を書いていけたらと思っています。

◆受賞者挨拶(テーマ部門)

〈大賞〉『ハローハロー』九津ここのつ 十八とおよう

〈受賞コメント〉
テーマ部門で大賞を頂きました、九津十八と申します。ハナショウブ小説賞のことは、noteに投稿されていた『小説コンテストを開催することにした、駆け出し出版社の話』という記事を読んで知りました。

今回受賞した『ハローハロー』という作品の主人公とヒロインは中学生です。主人公は吃音症で、ヒロインは車椅子に乗っています。私たちからすると、ほんの少しだけ生きづらさを感じているのではないかなと思うような二人の姿を描きました。

なぜこの作品を書いたのかと言いますと、私が中学3年生のとき、1年生に車椅子の女の子が入学しました。入学の話は聞いていましたし、学校でも工事が進んでいました。それがいつだったかは覚えていませんが、あるとき、その女の子が廊下でちょっとした段差に手こずってるのを見たことがあります。実際に手こずっていたのかどうかはわからないですし、私から見たらそう思えただけかもしれません。何か自分にできることを、と思ったのですが、当時の私は思春期で、女の子に声をかけるということができず、素通りをしてしまったんです。それがずっと心に残っていて、その棘をどうにかして抜きたいと思って書いたのが、この作品です。そんな経緯があったので、どう評価していただけるかはわかりませんでした。

本当はopsol部門に応募しようと思っていました。この内容なら、福祉だと思ったので。でも、直前になって「いや、テーマ部門の『ふたり』の方が、この作品にぴったりだ」と思い、部門を変更して応募した結果、大賞をいただくことができました。大賞という栄えある賞をいただいて、身が引き締まる思いです。本当にありがとうございました。

〈銀賞〉『帰る場所』目白めじろ 成樹しげき

〈受賞コメント〉
今回、このような晴れがましい席に招いていただき、また賞までいただきまして、本当に感謝しております。

小説を本格的に学び始めたのは4年ほど前になります。カルチャーセンターのようなところで小説講座に通い、講師の先生に色々ご指導を受けました。思いのほか自分でも驚くぐらいにハマり、小説を書くことになりました。今回賞をいただいた小説は、一昨年頃に書いた作品です。実は 20年ほど前、三重県に5年ほど住んでいたので、この賞をインターネットで拝見したとき、非常に親近感がありました。また、主催している会社が、医療関係のお仕事をされてるということも、応募に至った理由の一つです。というのも、私も長年医療関係の仕事を続けてきたもので、その縁もあり応募させていただきました。

これを機会に更に創作に励み、上を目指したいと考えているところです。本日は本当にありがとうございました。

◆祝辞

選考委員:鈴木 征浩(opsol株式会社 代表取締役社長/opsol book代表)

(一部抜粋)
受賞者の皆さま、そしてご家族の皆さま、改めましてこの度は受賞おめでとうございます。本日、このような場所を設け、皆さまにお会いさせていただくことができたこと、そして、直接お祝いの言葉をお伝えさせていただけたことを、本当にうれしく思っております。

ハナショウブ小説賞は、とにかく手探りで進めている賞です。2022年の9月頃に初めてnoteに記事を投稿し、その後なんとか第1回を開催することができました。幸運なことに、大変素晴らしい作品をご応募いただけたおかげで、当初の目標であった受賞作の書籍化も決定し、胸を張って送り出せる作品に出会うことができました。

この賞は、続けていくということが何よりも重要だろうと考えています。第1回と第2回は、実は半年ほどしか間が空いていません。第1回の結果発表を待たずして、第2回を続けて開催させていただいた次第です。

作品を読むという時間は、私にとって本当に幸せで、本当に辛い時間です。素晴らしい作品をたくさん送っていただける、或いはお預けをいただけるということは、とても光栄です。どの作品も、皆さんの思いが何らかの形で詰まっています。荒削りな作品もございますし、完成度が高いと言われるような作品もございますが、どの作品も私には等しく重みがあります。初めての読者として触れられるということは本当に幸福ではありつつも、命をかけて書かれた作品をお預かりしてるという自覚がありますので、作品を読む際は、こちらも命がけで作品と向き合っています。全身に力が入っていたり、何度も何度も振り返って読み返したりするので、作品の選考に関しましては、一作ずつ時間をかけて読ませていただくようにしております。最初の読者となり、僭越ではありますが、選ぶという行為をさせていただき本日に至っているということは、本当に奇跡の連続で、非常にうれしいことだと思っています。

最後に、皆さまには言うまでもないことかもしれませんが、「神は細部に宿る」ということを申し上げたいと思います。皆さまの作品について、使われている言葉やセリフというものが軽く感じる作品というのも、実はあります。全ての作品の著者様とお話をさせていただくわけではありませんが、実感として、込めらている思い、お調べになっている情報、背景というものが、いかに濃いか深いかというもので分かれている気がしています。

これは通常のどのようなお仕事でも同じなのだろうという風に思うのですが、物語を作って届けるということは、非常に特別なことだと考えています。裏側に何が込められているのか。本という形になったら、一冊の物体という意味ではどの本も似たような形になるかもしれません。しかし、そこに込められているものは全く違うものだと思っています。その中で、皆さまにお書きいただいた深い物語、重みのある物語というのは、確かに読者の方の心に届くものだと思っています。

このような思いを込めて開催しております、ハナショウブ小説賞。第2回も授賞式を開催させていただくに至りまして、本当に幸せな思いでおります。おそらく受賞されている皆さまよりも、私の方が幸せです。この度は本当におめでとうございます。


選考委員:宮川 和夫(装丁家〈宮川和夫事務所〉)

(一部抜粋)
受賞者の皆さま、本日はおめでとうございます。

装丁家とはどんな仕事なのかという話を、まずは最初にしたいと思います。皆さまの小説はテキストで、二次元の世界です。私たち装丁家は、仕事をするにあたって、ゲラというものが出版社・編集者から送られてきます。本になろうとゲラであろうと中身は一緒なのですが、ゲラのままだとすごく読みにくいんです。逆に、本になった途端にすごく読みやすくなります。本とは、そういう装置なんです。二次元の物語を三次元(立体)にしていきビジュアル化することよって、やっと書店に並ぶことができ、流通することができるんです。

例えば、書店に行き、ゲラの状態のまま並んでいる風景を思い浮かべてみてください。これはこの著者の小説、こっちはこの著者の小説、という風な形で。そんな風景って、ものすごく殺風景で面白くないですよね。色もありません。それを本という形にしていくことによって、不思議なことに、ものすごく賑やかで、なおかつ楽しそうで、皆が迷い込みたくなる本の森というものが出来上がっていくのです。それは、好奇心を掻き立てて、満足させる場でもありますし、知の森でもあります。

ところが、本が売れない時代になりました。書店が町からどんどん消えています。大手の書店でもそうですから、いわゆる昔あった町の書店というのは言わずもがな。つまり、それで食べていくことができない時代になってしまったんです。私たち装丁家も、本が売れて初めて仕事になるわけですから、なかなか厳しい時代になってしまったと思います。

そういった状況で、opsol bookの皆さんがハナショウブ小説賞というものを作りました。「宮川さん、審査員をしてもらえませんか」と言われたとき、少し失礼な言い方になりますが、「地方の小出版社が立ち上げた小説賞、果たしてこれは意味があるんだろうか」「続けていけるんだろうか」という、一抹の不安がありました。数多の小説賞があり、代表的な賞の受賞作であっても、今は本当に売れません。そして新しい本が出ると、古い本は書店から消えていきます。

それでも、「ハナショウブ小説賞」という言葉を聞いて、私はすごく良いなと思いました。ハナショウブが三重県の県花であるということと、「話で勝負する」という意味が込められていること。なおかつ大賞受賞作は、賞金だけではなく書籍化すること。これが良いんです。私は、やっぱり本にするのが仕事なものですから、受賞作は本にしたい。本にして初めて意味がある。本にして初めて見えてくる世界があると思っています。

現在、前回の受賞作の書籍化に向けて、制作を進めています。それが本になって世の中に出たときにどういう反響があるのか、今回受賞された皆さまも興味を持って見ていると思いますし、これから応募される方も同様でしょう。世の中に数多本が出ていく中での一冊ですが、その本が大河の一滴になってほしいと心から願っています。

あともう一つ。受賞された皆さま、ぜひ二作三作と書いてください。そして、この賞だけではなく、他の賞にも応募して、とにかく大きな作家になってほしいです。そのとき、プロフィールに「第2回ハナショウブ小説賞受賞」という紹介文があるとうれしいです。

改めまして、受賞者の皆さま、この度は本当におめでとうございます。


opsol book編集部より

改めまして、受賞者の皆さま、このたびは受賞おめでとうございます。また、第2回ハナショウブ小説賞へご応募いただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。

授賞式開催後は、同会場内で懇親会を開催いたしました。

終始和やかなムードで進行した懇親会では、受賞者の皆さまと直接お話しすることができ、主催者ながら編集部のメンバーも楽しい時間を過ごさせていただきました。

また、今回の授賞式で、中日新聞様、ZTV様による取材・撮影も行われました。

▼中日新聞Web様 大賞に「走れ!スーパー茜号」 伊勢の介護事業者主催「第2回ハナショウブ小説賞」

▼opsol book公式サイト 中日新聞様掲載のお知らせ

ZTV様では、4月15日(月)18時放送の「いせトピ」にて、授賞式の様子をご紹介していただく予定です。 伊勢市、鳥羽市、志摩市(磯部町)、玉城町・度会町・南伊勢町にて放送されますので、対象地域の皆さまは、ぜひご覧ください。

今後のハナショウブ小説賞の予定につきましては、随時公式サイトやX、noteにてお知らせいたします。第3回以降は、一年に一回の開催を予定しております。皆さまのご応募をお待ちしています!

引き続き、ハナショウブ小説賞及びopsol bookをよろしくお願いいたします!


電子書籍発売のお知らせ

昨年開催した第1回ハナショウブ小説賞の短編部門にて大賞を受賞した「光を受ける者たち」(著・那月珠雨なづきしゅうに加筆修正を行い、opsol bookより電子書籍として発売しました。
本作は、特別支援学校を舞台とした短編小説で、著者が高校在学中に執筆。校外活動のボランティアとしてやってきた高校生たちと引率教員、そこで勤務する教員たちの出会いと葛藤を、瑞々しい感性で描いた作品です。
発売日:2024年2月9日(金)
発行形態:電子書籍
価格:本体価格350円+税
販売電子書店:Kindleストア、紀伊国屋書店、楽天Kobo、BookLive!、honto、Reader Store、auブックパス、 iBooks Store、理想書店など

〈刊行作品のご紹介〉

『神霊術少女チェルニ1 神去り子爵家と微睡の雛』(須尾見 蓮/2021)

定価 本体1,800円+税 A5変型版ハードカバー

ほとんどの国民が神霊術を使うルーラ王国の南部。
「チェルニちゃん、いてくれてよかった。きみに力を貸してほしいと思っているんだ。街の子供たちが三人、拐われたかもしれない」
この誘拐事件をきっかけに、チェルニの運命は大きく動き出す――。

▼noteでもお読みいただけます!

『フェオファーン聖譚曲オラトリオ』シリーズ(菫乃薗ゑ/2020)

※絶版中、現在新装版刊行準備中。

「私には、この大王国の黄昏の鐘が聞こえるよ」
王族、政治家、騎士たちのさまざまな思惑の中行われようとしている禁忌の「召喚魔術」。
アントーシャたちは、果たしてそれを止めることができるのか。そして強大な王国を倒すために採ろうとしている前代未聞の手法とは――。

▼リニューアル版(op.Ⅰ)はnoteでもお読みいただけます!

▼編集部の社員が日常を綴ったnote記事はこちら


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