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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-26

 アリアナお姉ちゃんは、自分をさらおうとしている悪人たちから伸ばされた、不気味でどす黒い思念の糸を、思い切り良くち切っていった。普通の女の人だったら、怖がって泣いちゃうところだと思うんだけど、お姉ちゃんはひるまない。怯まないったら、怯まない。
 凛々しい美少女が、ほんのり紫色に光る握り鋏を振るって、次々と悪縁の糸を截ち切っていく情景は、昔々の神話みたいで、とっても美しかった。皆んな、感心した顔でお姉ちゃんを見ているし、フェルトさんなんて、なぜか頬を薔薇色に染めちゃってるよ……。
 
 そして、編みぐるみのムスヒ様の命じるまま、次はアリアナお姉ちゃんが詠唱する番になった。わたしが、〈お姉ちゃん、お願い! お姉ちゃんの思う言葉で、心配事を截ち切って!〉って声をかけると、お姉ちゃんは、にっこり笑ってうなずいてくれた。
 アリアナお姉ちゃんの周りには、まだ気持ちの悪い色をした糸が、うねうねとうごめいている。お姉ちゃんの周りを、きらきらした空気が包み込んでいるから、糸が絡みつくことはないんだけど、見ているだけで嫌な気持ちになるし、さっさと消えてほしい。お姉ちゃんだって、口には出さなくても、そう思っているに決まっているんだ。
 
 アリアナお姉ちゃんは、左手にご神鋏を握ったまま、鈴を鳴らしたみたいに可憐な声で、詠唱を始めた。
 
「いとも尊いご神鋏、おそれ多くも御名ぎょめいをお許しくださいました、ありがたき〈紫光しこう〉様。厚かましいお願いではございますが、更なるお力をお貸しくださいませ。わたくしを思ってくださるあまり、悲しんでくださる方々の哀切の糸を、截ち切らせてくださいませ。わたくしの髪は、蜃気楼のご神霊様にお捧げしておりますので、わたくしの魔力を対価にお受け取りくださいませ。それから、よろしければ、これを」
 
 そういって、お姉ちゃんがドレスのポケットから取り出したのは、細い細いレース糸で編まれた、小さな編みぐるみだった。純白のふくふくした雀はスイシャク様、長い尾羽の真紅の鳥はアマツ様、白黒のパッチワークの羊はムスヒ様、黄色に白いつのの龍はクニツ様だと思う。
 可愛い編みぐるみのセットを見て、わたしはすぐにひらめいた。お姉ちゃんってば、わたしのために作ってくれて、神霊庁からの帰り道にでも、渡してくれるつもりだったんじゃないかな? まったくもって、素晴らしい姉である。
 
 お姉ちゃんが、編みぐるみのセットを捧げ持つと、四体の編みぐるみは、なぜかふわりと浮き上がり、次の瞬間には消えていた。ご神鋏とつながっている雷截神らいせつのかみ様が、対価を受け取ってくださったんだろう。
 編みぐるみが消えると同時に、ご神鋏が強い輝きを発し、その光に誘われるように、またまた汚らしい泥色の糸が、お姉ちゃんに向かって伸びてきた。一本、二本、五本、十本、二十本……。
 ええ? アリアナお姉ちゃんに振られても、諦め切れない男の人って、こんなにいるの? さすがに、ちょっと怖いよ、お姉ちゃん……。
 
 あまりの糸の多さに、皆んなが衝撃を受ける中、アリアナお姉ちゃんは、やっぱり躊躇ちゅうちょしなかった。ぢょき、ぢょき、ぢょき、ぢょき、ぢょき、ぢょき、ぢょき、ぢょきって、まるで神楽かぐらでも舞っているみたいに優雅な動きで、どんどん糸を截ち切っていったんだ。
 汚らしい泥色の糸は、一本を截ち切られるたびに、ちりになって消えていく。ここじゃない、どこか遠くの方から、〈ひいぃいいい〉とか、〈うわぁあああ〉とか、悲痛な声が聞こえる気がするのは、絶対に錯覚に違いない。違いないったら、違いない。
 
 それなりの時間をかけて、何十本もの糸を截ち切ったアリアナお姉ちゃんは、ちょっと疲れた顔をしていたけど、表情は本当に清々しかった。お姉ちゃんには、何の危害も加えられなかったとしても、人の〈思い〉って、何らかの形で相手に届いているものだから、お姉ちゃんの負担になっていたんじゃないかな?
 良かったねってうれしくなって、思わず涙ぐんじゃったわたしの耳に、ヴェル様の凛とした声が響いてきた。
 
「お見事です、アリアナ嬢。次は、おそれ多くもかしこくも、御神々より〈凛悧〉の号を賜りました、わたくしの番でございます。さぞお疲れではございましょうが、わたくしの呼び出したる思念の糸を、皆々截ち切ってくださいませ」
 
 それだけいうと、ヴェル様は、ものすごい速さで雷截神様の印を切り、厳かな声で祝詞のりとを上げたんだ。
 
「尊み奉る御一挺 悪縁奇縁を截ち切らる 御神鋏をば司る 御神霊へと希う 神託の巫の姉巫女の 衣通姫をば嫉みたる 妬心の糸を截ち切り給えと 畏み畏み物申す 対価は内なる身の力 我ら神使の合力にて 尊き御神鋏に捧げるもの也」
(とうとみたてまつるごいっちょう あくえんきえんをたちきらる ごしんきょうをばつかさどる ごしんれいへとこいねがう しんたくのふのあねみこの そとおりひめをばねたみたる としんのいとをたちきりたまへと かしこみかしこみまもうす たいかはうちなるみのちから われらしんしのごうりきにて とうときごしんきょうにささげるものなり)
 
 ヴェル様の祝詞が終わるや否や、すごい数の糸が、いっせいにお姉ちゃんに向かって伸びていった。不気味に濁った赤色や、汚らしくまだらになった茶色や、気持ちの悪い沼みたいな緑色の糸、糸、糸、糸……。
 何十本、何百本もありそうな糸の数に、思わずアリアナお姉ちゃんが心配になって、顔を強張らせたら、すかさずミル様が動いてくれた。ミル様は、ヴェル様とうなずき合ってから、優しい声でいったんだ。
 
「糸の数が、ずいぶんと多うございますね。御神鋏は、そのことも予見なさったうえで、我らを御指名になられましたのでしょう。わたくしが、お預かりしております神器にて、アリアナ嬢の負担を減らしたく思います」
 
 そういって、涼しい顔をしたミル様が、着物のたもとから取り出したものを見て、わたしは、ぱかんと口を開けた。だって、ミル様の手に握られていたのは、親指くらいの太さがあって、両手を広げたくらいの長さがあって、神々しい銀色に光り輝いている、鎖だったんだよ!
 あんなに太くて長い鎖なんだから、着物の袂に入るはずがないし、無理に入れたりしたら、一目でわかるに決まってる。どう考えたって、今の今までなかったはずなんだ。ミル様ってば、どこから取り出したのさ?
 
 わたしや皆んなが、びっくりして固まっている内に、ミル様は、朗々ろうろうとした声で祝詞をあげた。
 
「斯くも尊き御一柱 神成り遂げられたる新神の 御霊の雫 和魂 悪縁截ちし御神鋏へと希う 神使の一たる我の身へと 貸し下されし神器にて 結び縛りたる御神鎖の 御力添えをば赦し給へと 畏み畏み物申す 定める対価は霊の力 使号凛悧と合力し 慎み捧げ奉る」
〈かくもとうときおんひとはしら かんなりとげられたるにいがみの みたまのしずく にぎみたま あくえんだちしごしんきょうへとこいねがう しんしのいちたるわがみへと かしくだされしじんぎにて むすびしばりたるごしんさの おちからぞえをばゆるしたまへと かしこみかしこみまもうす さだめるたいかはちのちから しごうりんりとごうりきし つつしみささげたてまつる〉
 
 ミル様の祝詞が終わるや否や、視界の端で銀色がきらめいた。ミル様の握っていた鎖が、しゃらんしゃらん、軽やかな音を立てながら、空中を滑っていったかと思うと、お姉ちゃんに向かって行っては弾かれている、何十本何百本もの糸の間をくぐり抜け、くぐり抜け、見る見る内にひとたばに縛り上げちゃったんだ。
 
 神々しい銀色に輝く鎖に縛られて、ぐねぐねと抵抗していた何十本もの糸は、すぐに一本により合わさって、毛糸くらいの太さの縄になった。汚い色がまだらにうごめく、気味の悪い糸。ミル様は、糸が一本になったのを確かめてから、手首を振って鎖を抜き取ると、アリアナお姉ちゃんにいった。〈今です、アリアナ嬢!〉って。
 
 ミル様の声に弾かれたみたいに、太い糸は、ぶるぶると震えたかと思うと、もう一度、アリアナお姉ちゃんに向かって、勢い良く伸びていった。怖いけど、不気味だけど、頑張って、アリアナお姉ちゃん!
 わたしも、皆んなも、必死になって見つめる中、アリアナお姉ちゃんは、堂々と糸に向き合った。そして、右手のご神鋏が、ひときわ強い光を放ったかと思うと、じょきって、見事に糸を截ち切っていたんだ。
 
 今度の叫び声は、ものすごく大きかった。人のものだとは思えない、妙にうつろな声なのに、絶叫したんだよ。〈ぎひいやぁあああ〉って。
 その声を聞きながら、なぜだか悲しくなったわたしの頭に、きらきらと輝く純白の文字が、優しく浮かび上がった。〈因果の糸を截ち切るは、《紫光》の慈悲に他ならず。衣通への慈悲にあらず。愚かなる衆生への救い也〉って、スイシャク様が、そっと伝えてくれたんだよ……。
 
     ◆
 
 見事に糸を截ち切ったアリアナお姉ちゃんは、さすがに疲れちゃったんだろう。右手にしっかりとご神鋏を握ったまま、まぶたを閉じたかと思うと、ふらっと倒れそうになったんだ。お父さんとフェルトさんが、慌てて椅子を蹴って立ち上がり……お姉ちゃんを抱き止めたのは、わたしの大好きなお父さんだった。
 フェルトさんってば、なぜか衝撃を受けたみたいで、悲壮な顔になってるけど、それは仕方ないと思う。お父さんの方が、位置的にお姉ちゃんに近かったし、年季ねんきっていうものが違うからね。わたしとアリアナお姉ちゃんは、筋金入りのお父さん子なんだよ。
 
 お父さんは、恨みがましい顔をしたフェルトさんに向かって、にやって笑いかけた。それから、軽々とお姉ちゃんを抱き上げ、わたしがしてもらっていたみたいに、椅子の上で抱きかかえた。アリアナお姉ちゃんが、すっごく安心した表情になっているのは、お父さんの存在を感じ取っているからだろう。お父さん、かっこ良い!
 
 フェルトさんが、ちょっと泣きそうな感じで席に戻り、おずおずとアリアナお姉ちゃんの顔をのぞき込んでいるのを見て、ミル様が楽しそうにいった。
 
「これはこれは。チェルニちゃんといい、アリアナ嬢といい、カペラ家のお嬢様方は、お父上が大好きなようですね」
「そうなのです、猊下げいか。誠にもって、カペラ殿はルーラ王国一の果報者でいらっしゃいます。お美しい奥方とお嬢様方に、この上もなく慕われておられますからね。わたくしが、カペラ家に滞在させていただいている間にも、それがよく伝わって参りました」
「あら、当然ですわよ。わたくしの愛する夫は、本当に素晴らしい男性ですもの」
「やめてくれ、ローズ。さすがに恥ずかしい」
「はい! はい!」
「何ですか、チェルニちゃん?」
「うちのお父さんは、とっても優しくて、頼りになって、かっこ良くて、立派な人です。わたしもアリアナお姉ちゃんも、お父さんが大好きです!」
「ほほほ。これは、本当にルーラ王国一の幸福を得ておられますね、カペラ殿。お嬢様方のお相手は、いろいろと大変でございましょう」
「まったくでございます、コンラッド猊下。わたしは、日々、義父の背を追いかけておりますが、まだ遥か彼方かなたです…….」
「本当に大変ですね、猊下。フェルト殿もレフ様も」
「ど、どうして、そこで、ネッ、ネイラ様のお名前が出るんですか、ヴェル様ってば」
「……気のせいだ、チェルニ。おまえは、何も聞いていない。気のせいなんだから、忘れるんだ。いいな?」
 
 突然、いきなり、ネイラ様の名前を出されて、わたしは激しく動揺した。お父さんは、一人だけ憮然ぶぜんとした顔でそっぽを向き、後の人たちは、何だか楽しそうに笑ってるし。わたしの気持ちが、全員にばれているんじゃないかって、考えると怖くなるので、絶対に気にしないようにしよう。そうしよう。
 自分でもわかるくらい、顔が赤くなっちゃってるわたしに、ふんわりと微笑んだミル様が、優しく話しかけてくれた。
 
「ふふ。咲きそめし薔薇の可憐さですね、チェルニちゃん。あまりからかうと、いろいろと怖うございますので、今日の訪問の最後に、現実的なお話をいたしましょうか。これから行われる神霊庁の裁判なのですが、契約を司る御神霊が、顕現けんげんなさるということで、よろしかったのですね?」
「はい。契約を司る御神霊であるクニツ様は、裁判の場でお伝えになりたいことがあるので、顕現なさるそうです」
「その際は、チェルニちゃんが、〈神降かみおろし〉をしてくださるのですね? それは、いつになりますでしょうか? 裁判そのものは、三日間にわたって行う予定でおります。裁判官の役を務めますのは、神霊庁に伝わる神器の一つである、御神しょうから印を許された、神使の一人でございます」
「えっと、クニツ様は、細かいことにはこだわらないって、おっしゃってました。いつでもかまわないから、〈告げるべきこと〉を告げたいだけだそうです。あの、この間、クニツ様が顕現されたときに、そういう意味のメッセージがきたんです」
「ふむ……。最初に御出ましをたまわるか、最後に顕現あれかしと希うか、むずかしいところですね、パヴェル」
「左様でございますね、猊下。契約を司る御神霊から、どのような御告げを賜るかによって、いろいろと変わっては参りましょうが……。まず、現世うつしよの証拠を明らかにし、罪人らの尋問に移る前に、御出座ごしゅつざを賜るというのは、いかがでございましょうか」
「ええ。良い頃合いでしょうね。では、チェルニちゃん。裁判の二日目、チェルニちゃんに神霊庁に来ていただいて、〈神降〉をしていただけますでしょうか?」
「大丈夫です。クニツ様にも頼まれちゃったので、わたしにできることは、協力させていただきます。王立学院の受験とは重ならないですよね?」
「もちろん、重ならないようにいたしましょう。余裕を見て、受験の十日後からでも、日程を組ませましょう。カペラご夫妻やアリアナ嬢、フェルト殿、シーラ殿には、チェルニちゃんがお休みの間に、神霊庁に一任するとの許可をいただいていますので、決定してしまいましょう。よろしくお願いしますね、チェルニちゃん」
「はい! 頑張ります!」
「ありがとうございます。では、あまり遅くなっても申し訳ありませんので、神霊庁からのお土産をお渡しして、お開きといたしましょう」
 
 そういって、ミル様が合図を送ると、部屋の片隅に控えていた神職さんが、深々と頭を下げてから出て行った。お父さんとお母さんは、高価なものはいただけないって念を押したんだけど、ミル様とヴェル様は、静かに微笑んでいるだけだった。
 わたしの腕の中のスイシャク様と、肩の上のアマツさまと、腰に寄りかかっているムスヒ様が、それぞれに〈受け取るべし〉〈間もなく必要とならん〉〈人の子の言う《様式美》というもの也〉〈佳き配慮也〉って、次々にイメージを送ってくるから、もらって帰るしかないんだろうな、きっと。
 
 しばらくして、神職さんが戻ってきたときには、後ろに三人の神職さんが続いていた。ヴェル様と一緒に〈野ばら亭〉に来てくれていた、パレルモさんたち。三人とも、薄くて大きな木箱を、両手に捧げ持っている。
 ヴェル様が重々しくうなずくと、三人は、わたしの前の大机に、丁寧に木箱を置いていった。でね、近くで見ると、その木箱は何だかすごかった。素材はきりだと思うんだけど、ため息が出るほど綺麗な薄茶色に輝いていて、ピンク色の螺鈿らでん細工で、ところどころにサクラの花びらが散らしてある。上品で控えめで、だからこそ最上級の品物なんだって、わたしにもわかったよ。
 
「どうぞ、開けてご覧になってくださいませ、チェルニちゃん。当座の間に合わせに、〈神託しんたく〉の装束しょうぞくを一式、ご用意させていただきました。特殊な装束などは、お受け取りいただけるとのことでございますので、お気軽にお持ち帰りくださいませ」
 
 ミル様に促されるまま、わたしは、右端から順に箱を開けることにした。わたし、手に汗なんてかいてないよね? こんな高そうな箱に入っている〈装束〉って、手汗をつけちゃって良いようなものじゃないよね? お母さん、助けて!
 わたしの困惑が伝わったのか、側で見守ってくれているお母さんが、そっとハンカチを差し出してくれた。わたしは、ありがたく受け取って、しつこいくらい手を拭いてから、ゆっくりとふたを開けていったんだ。
 
 一つ目の桐箱に入っていたのは、純白の着物だった。ただの純白じゃない。まるでスイシャク様の羽根のような、内側から光を発するような、月明かりに照らされた新雪のような、神々しいほどの純白。ミル様やヴェル様が着ている、純白の着物と同じ、神霊庁の特別な衣装なんだろう。
 二つ目の桐箱に入っていたのは、真紅のはかまだった。神職の女の人は、緋色ひいろの袴を付けていることが多いんだけど、目の前の袴は、それよりもずっと深い紅色なんだ。まるでアマツ様の炎みたいな、どこまでも鮮やかな真紅は、思わず身震いするくらい美しかった。
 そして、三つ目の桐箱に入っていたのは、純白の透ける絹地の上に、銀色の糸で刺繍を入れた薄衣だった。ミル様やヴェル様が着ている格衣かくえに似ているんだけど、ちょっと違う。襟元に真紅のひもがついていて、結べるようになっているんだ。あまりの華麗さに、ぼうっと見惚れていると、ヴェル様が、そっと〈千早ちはやという神事のための衣ですよ〉って教えてくれた。
 
 これって、どこからどう見ても、お土産なんていえる品物じゃないと思う。きっとものすごく高価に決まっているんだけど、やっぱり断れないんだよね? お父さんもお母さんも、大きなため息をつくだけで、深々と頭を下げているし。
 大机の上で光り輝く装束が、わたしの今後を暗示していたらどうしようって、胃が痛くなる気分になったのは、仕方ないことだと思う。意外と慎み深い少女なのだ、わたしは。
 
 ともあれ、激動に次ぐ激動、不思議に次ぐ不思議だった、初めての神霊庁訪問は、何とか無事に終わったよ……。