見出し画像

子猫と遭遇して泣いた、17歳の夏

こんにちは、opsol bookのヤナガワです。
先日、三重県四日市市にある「伊坂ダムサイクルパーク」さんに行ってきました。自転車に乗る元気はなかったので、伊坂ダム周遊コース(約3.6km)をのんびりお散歩することに。桜の開花はまだでしたが、「桜の木があるってことは、これはもう咲いているのと一緒だよね」と、強引にお花見(木見)を楽しみました。

さて、現在開催中の「第1回ハナショウブ小説賞」では、「介護」「医療」「福祉」をテーマにしたフィクションの作品を募集中です。長編部門の大賞作品は、opsol bookより書籍化いたします。そのほか、短編部門、中学生部門、小学生以下の部門への応募もお待ちしています。

▼応募締め切りは3月31日(金)23時59分! 残り4日です!

第1ラウンド

あの日のことを、今でも鮮明に覚えています。

あれは高校3年生の夏休み、丁度お盆の時期のことです。アルバイトを終えた私は、のんびりと帰路についていました。

自宅まで残り100メートル程の地点で、前を歩く子猫を発見。交通量の多い細い道で子猫が一匹だけだなんて、何かあったら大変です。私は子猫の横に並び、車道側を歩くことに決めました。絶妙な距離感を保ちつつ、子猫が車道に飛び出してしまわないようにガードレール的役割を担います。

しばらくして「ここならあまり車も通らないし、もういいかな」と判断した私は、子猫の隣から離れ、前を歩き始めました。少し気になって振り返ると、もう後ろに子猫の姿は見えません。

きっと、別の道を行ったのかな、何もなくて良かった。そう思いながら再び前を向き、もう少しで自宅に着く、そんな時です。不意に足元に気配を感じました。

もしかして、と視線を下げると、足首のあたりに毛の感覚。

ひゃ! 子猫! いる!

いました。姿が見えなかったのは、別の道を行ったからではなく、私の踵のすぐ後ろを歩いていたからでした。

ここで白状するのもなんですが、実は私、動物が苦手なんです。苦手と言っても、写真で見るのは好きですし、知人の自宅にいる犬や猫達は可愛くて仕方がありません。心が荒んだときは、動物の動画を見ることもあります。1から100まですべてが苦手、というわけではありません。

動物そのものではなく、「丸腰の状況で遭遇する動物」が苦手なのです。なぜなら、私より動物のほうが、野生を生き抜くレベルが確実に上なので。足速いし。顎強そうだし。

踵に感じる子猫の気配。この状況は非常にまずいです。なんせ私は50メートル走10秒台の女。学生時代の徒競走は万年最下位。この子猫ちゃんに勝てる気がしません。でも、このままだと自宅まで付いてきてしまう。できればそれは避けたいところです。

・このまま徒歩で帰宅し、子猫が自宅を特定することを容認
・一か八かダッシュで逃げる

選択肢はこれしかありません。足は遅いし、顎も弱き人間が後者の選択肢を選んで、果たして勝算はあるのだろうか。いや、私はまだ17歳。女子高生のうちに、チャレンジするべきことがあるはず! 得意の謎理論により、このピンチを切り抜ける手札として、私は後者を選択しました。

私がスタートを切ると同時に走り出す子猫。恐るべきスピードで私の後を追いかけてきます。直線ではギリギリ勝てていたものの、自宅があるのは坂の上。ここからが本番です。

私が角を曲がって坂を上り始めた数秒後に、子猫も大回りの末最終コースに差し掛かりました。追いつかれる寸前の私は、齢17歳にして半泣き状態。子猫に追いかけられているだけなのに。

玄関に辿り着き、息も絶え絶えの状態で鍵を探します。振り返ると、子猫もゴール寸前。また涙が出ました。恐らく、この時の私は焦りのあまり、足踏みをしながら「ひ~ん」と情けない声を出していたと思います。

自宅の敷地内に子猫が足を踏み入れたところで、ようやく鞄の中から鍵を引っ張り出し、急いでを開けて中に入ります。

ヤナガワVS子猫、僅差でヤナガワの勝利!

第2ラウンド

死闘を繰り広げた第1ラウンドも終わりを迎え、平穏な時間を取り戻すことができました。外から聞こえていた鳴き声も、いつも間にか聞こえなくなり、子猫が自宅付近から離れたことがわかります。

ほっと胸をなでおろしたところで、もう夕方なのに洗濯物を干しっぱなしであることに気が付きました。恐る恐る玄関を開けてみますが、やはり子猫の姿は見当たりません。勝利を確信していたものの、念には念を入れなければ。警戒しながらすばやく洗濯物を取り込みます。両手に洗濯物を抱え、玄関に向かったその時。

\にゃ~/

すぐ側で聞こえてきた「にゃ~」の声に、再び「ひ~ん」となる私。辺りを見回すと、僅か30センチ先にあるエアコンの室外機の間に、見覚えのある子猫の姿。これが推しだったら大興奮案件なのに、というレベルでばっちり目が合いました(推しが室外機の間にいるほうが恐怖ですが)。

ヤナガワ、再び半泣きです。

子猫、おるやん。ピョイ~ンとその場でジャンプをした後、一目散に玄関へ向かうと、子猫が室外機の間から飛び出してきました。脈打つ心臓の音が、体中に響きます。一人と一匹の距離はかなり近いものの、玄関までの道のりはそう遠くはありません。第1ラウンドのように坂を上る必要はないため、すぐに自宅に入り、事なきを得ました。

その日からしばらくの間、いつ室外機から子猫が飛び出してくるのかと怯え続け、いつでも逃げられるようにと、ステップを踏みながら洗濯物を取り込む羽目になりました。

子猫ちゃんへ
次回以降、自宅周辺に来る時は事前にアポを取ってからにしてください。お願いします。

ヤナガワVS子猫、心理戦は子猫の勝利!

ちなみに、我が弟も下校時に猫に追いかけられて、自宅まで泣きながら走ったことがあるそうです。彼は私と違い、小学生の頃の話ですが。


第1回ハナショウブ小説賞では、「介護」「医療」「福祉」をテーマにしたフィクションの小説を募集中です。
作品のジャンルは不問です。動物が登場するお話もお待ちしています!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!