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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-10

 いつものように、輝かしい神威しんいをまとって、アマツ様が戻ってきたのは、晩ご飯が終わって、のんびりとお茶を飲んでいるときだった。
 
 ちなみに、お父さんのご飯を、初めて食べてもらったクニツ様と編みぐるみの神霊さんは、すっごく満足してくれたみたい。金色の龍の形を取ったクニツ様は、純金よりも美しい鱗を、いっそうきらめかせていて、もう金色のダイヤモンドかっていうくらいの神々しさだった。
 ブラックフェイスの羊の編みぐるみは、黒い刺繍ししゅう糸で、可愛くバッテンに縫われているだけの口を、なぜかパカパカ開けるっていう奇跡を披露して、おいしそうに食べてくれた。尊い神霊さんのご分体なのは、よくわかっているんだけど、最初の一品、最初の一口を食べる度に、黒いボタンみたいな瞳が、きらきらと輝いて、めえぇぇ、めえぇぇって、吐息みたいな声を漏らすのが、本当に可愛すぎたよ。
 
 そんな食後の食堂に、アマツ様は、屋根も天井もないかのように、ふわりと降臨した。降り立った先は、わたしの左肩で、〈ただいま〉っていう挨拶に、わたしの頬にすりっと頭をすり寄せてくれたんだ。
 アマツ様のくちばしには、いつの間にか、立派な封筒がくわえられていた。もうすっかり見慣れちゃった、ネイラ様の紅い封蝋ふうろうが押されているのを見て、胸がどきどきして、自分でもわかるくらい顔が赤くなっちゃったのは、こっ、恋する少女としては、仕方のないところだろう。
 
 緊張に震える手で、ネイラ様の手紙を受け取って、宛名を確かめる。何となく予想していた通り、そこに書かれていた名前は〈マルーク・カペラ様〉。わたしの大好きな、お父さんだった。
 
「お父さん、お父さん」
「どうした、チェルニ? お前の顔、赤くなって、ちょっと猿みたいだぞ?」
「十四歳の少女に、お猿とは失礼な。それよりも、ネッ、ネイラ様からお手紙だよ。お父さん宛になってるよ」
「……ネイラ様からの手紙だと……そうやって赤くなるんだよな……おれの可愛い、小さなチェルニは……。そうか……」
「お父さん? 何をいってるのか、聞こえないよ。目がうるんじゃってるけど、大丈夫? 急に、ごみでも入った?」
「大丈夫よ、わたしの可愛い子猫ちゃん。ダーリンは、ちょっと男親としての宿命と戦っているだけだから、気にしないでね。ネイラ様からのお手紙を、読ませてもらうわ。ね、ダーリン?」
「……ああ……。そうだな……。大切なのは、おれの気持ちなんかじゃない。おれの大事な、愛しいチェルニの幸福だよな……」
 
 お母さんは、ほがらかな笑顔になって、わたしから手紙を受け取った。お父さんは、妙に穏やかな顔で、お母さんが封を切る様子を見つめている。わたしとネイラ様の愛読書である、〈騎士と執事の物語〉の中の一節、〈すべての葛藤かっとうを超えた透徹した表情〉って、あんな感じなんじゃないのかな?
 最近のお父さんが、ちょっと情緒不安定なのは、アリアナお姉ちゃんが、近いうちにお嫁に行っちゃうからなんだろう、やっぱり。これからは、今までよりも、もっとお父さんに優しくしよう。そうしよう。
 
 丁寧に封を切ったお母さんは、中の手紙を取り出して、そのままお父さんに手渡した。お父さんは、静かな表情で手紙を開き、ゆっくりと読んでから、いきなり元気いっぱいになって、こういった。
 
「よし! 普通の手紙だ! いや、書いてある内容はとんでもないが、とりあえず問題はない。大丈夫だった!」
「あなたったら、ちっともわからないわ。ネイラ様は、何とおっしゃってるの?」
「ああ。神霊庁の裁判のことだった。アリアナとフェルトには、神霊庁から聴聞の依頼があるそうだ。クローゼ子爵家に関する一連の事件で、アリアナとフェルトが、神霊庁への告発を行なったからな。裁判の準備として、詳しく説明する必要があるらしい」
「それは、告発者としての当然の義務だわ。アリアナもフェルトさんも、かなりの時間をかけて、事情を聞かれるでしょうね」
「その通りだ。そして、チェルニの肩の上で伸び切っている、契約を司るご神霊のおおせによって、チェルニからも話を聞く必要が出てきたらしい。まあ、それも当然だろうな」
「チェルニも、聴聞を受けるのね。わたしの可愛い子猫ちゃんは、とてもしっかりしているから、きちんとお役目を果たせるわね。でも、なぜ、神霊庁ではなく、ネイラ様が知らせてくださったのかしら?」
「ネイラ様は、こちらの意向を聞いてくださっているんだ。神霊庁からは、大神使であられるコンラッド猊下げいかが、他の神使の方々を伴って、直々にうちを訪ねたいとの仰せだそうだ。ご神霊にまみえる可能性が高いんだから、当然のご判断だろう。ネイラ様は、それが迷惑なら、コンラッド猊下をお止めくださるそうだ。その場合は、こちらから、神霊庁に伺うことになる」
 
 はぁ? お父さんってば、どうして平然とした顔をしちゃってるの? コンラッド猊下がうちに来られるとか、大事件じゃないの。しかも、他の神使の方々もご一緒だとか、どうしたらいいのかわからないよ。
 〈豪腕〉経営者として知られるお母さんも、びっくりした顔をして、軽くお父さんの腕を揺さぶった。
 
「ダーリンったら、どうしてそんなに普通なの? コンラッド猊下なんて、国王陛下とさえ、対等の身位にあられる方なのよ? 大変じゃないの!」
「いや、最初の覚悟に比べたら、どうってこともないさ。軽い、軽い。そもそも、王族であられるオディール姫が、わが家にお越しになり、フェルトが大公家の継嗣けいしになる話まで出ているんだぞ? それ以前に、ご神霊のご分体が、当たり前のように同居しているんだから、いまさらだろう?」
「……まあ、そういわれればそうね。ご神霊の存在以上に、畏れ多いものなんてないんだから、別にいいわね。さすがだわ、ダーリン」
現世うつしよの権力なんて、可愛い娘の幸福に比べれば、まったく大した問題じゃないさ。おれの心の平安をおびやかすのは、愛する娘たちの、れっ、恋愛と、けっ、結婚だけだ。ははは!」
「いろいろと振り切れちゃったのね、ダーリン……」
「はい! はい!」
「何だ、チェルニ?」
「ネッ、ネイラ様のお手紙だと、わたしたちが、神霊庁に行ってもいいってこと?」
「ああ。コンラッド猊下に足をお運びいただくのも、こちらからお伺いするのも、自由に決めていいそうだ。畏れ多くも、ネイラ様は〈カペラ殿のご意向に沿わせます〉と、書いてくださっているからな。どうしたい、チェルニ? アリアナも、どうする?」
「わたしは、どちらでもかまわないわ、お父さん。チェルニの……というか、ご神霊のご指示の通りにした方がいいんじゃないかしら?」
「その通りだと思うわ。わたしの大事なお花ちゃん。ね、ダーリン?」
「わかった。おまえの肩の上のご神霊にも、お伺いを立ててくれるか、チェルニ? それから、手紙を運んでくださった、炎を司るご神霊に、夕飯をお召し上がりになるかどうか、お尋ねしてくれ」
「はい! 了解です!」
 
 お父さんが、そういった途端に、アマツ様が、朱色の鱗粉を振りまいた。〈其の父たる神饌しんせんの申し子は、誠に殊勝しゅしょう也〉〈申し子の御饌みけこそは、我らが好むところ也〉って。アマツ様は、晩ご飯を召し上がるらしいよ、お父さん。
 
 気配りの人であるお父さんは、ちゃんとアマツ様の分も用意してくれていて、すぐに食卓に並べてくれた。そして、わたしが、アマツ様のお給仕をしている間に、神霊さんのご分体が、それぞれに相談を始めたんだ。
 
 要約すると、〈の者に世話をかけるは、我が望みにあらず〉〈何処いずこへなりと参らん〉っていうのが、金色龍のクニツ様。〈王都に参るが吉〉〈我が眷属の案内あないにて、学びを確かめん〉っていうのが、スイシャク様。〈めえぇぇ、めえぇぇ〉っていうのが、羊を司る編みぐるみ様……。
 編みぐるみ様のイメージは、御名ぎょめいを許されていないわたしには、さっぱりわからなかった。おいしくお食事中のアマツ様は、〈いずれなりとも可也〉だったから、神霊さん的には、王都に行くっていう選択なんだろう。
 
「まとまったみたいだよ、お父さん」
「どうなった、チェルニ?」
「クニツ様は、うちの家に世話をかけたくないから、神霊庁に行くって仰ってるよ。スイシャク様は、神霊庁はどうでも良くって、わたしが進学する、王立学院の見学をしたいって。スイシャク様ってば、教育熱心だから。アマツ様はどっちでも良いらしくて、編みぐるみ様の仰ってることは、あんまりわからないんだよ、わたし」
「ということは、ご神霊様方は、神霊庁に顕現けんげんなさるご意向だと考えて良いんだな?」
「うん。でも、お父さんやお母さんが、うちに来てもらいたいっていうことなら、それでもいいと思うよ」
「まさか。ルーラ王国の民である以上、ご神霊のご意向こそが最優先だ。一家で神霊庁に参上し、ご神霊の顕現を仰ぐとしよう。いいな、ローズ、アリアナ?」
「もちろんよ、ダーリン」
「わかりました、お父さん」
「よし。じゃあ、おれから、ネイラ様にお返事をさせていただこう。おれたちも王都に用があるから、ちょうど良いな」
 
 こうして、わがカペラ家は、コンラッド猊下や神使の皆様にもお目にかかるために、王都に行くことになったんだ。
 この流れだと、当事者ともいえるクニツ様は当然として、スイシャク様やアマツ様まで、神霊庁に同行することになりそうだし、スイシャク様なんて、本当に王立学院にまで行きそうな勢いなんだけど……まあ、いいか……。
 
     ◆
 
 神霊さんたちのご意向に従って、神霊庁への訪問を決めたお父さんは、ネイラ様にお手紙を書くことになった。夜のうちに用意しておいて、明日、朝ご飯を食べた後に、アマツ様に運んでもらうんだって。
 食後のデザートのマロングラッセを頬張り、優雅に紅茶まで飲んでいるアマツ様は、朱色の鱗粉を増量して、快く請け負ってくれた。わたしはといえば、ティーカップを差し出しただけで、スーッと浮き上がった紅茶が、アマツ様のくちばしの中に吸い込まれていくっていう、いつもながらの不思議な光景に、目を奪われたままだったけどね。
 
 マロングラッセのお皿が、綺麗にからになったのを見て、お父さんは、りんご煮の砂糖がけを出してくれた。これは、ご飯の最後の最後に、ひとかけらだけ食べるお菓子で、しっとりと透き通ったりんごの甘煮に、片面だけお砂糖をまぶしたものなんだ。
 お父さんに、生まれたときから〈餌付け〉されている、わたしたち姉妹は、このりんご煮が出ると、条件反射で食後のお祈りを捧げたくなる。八百万やおよろずの神霊さんに向かって、〈今日の恵みに感謝します。明日も一日、誠実に生きていきます〉って。人の習慣って、根強いものだよね。
 
 りんご煮を口に入れて、清々しい酸味と、優しい甘味を味わっていたわたしは、不意にさっきの会話を思い出した。
 
「あれ?」
「どうした、チェルニ?」
「そういえば、さっき、お父さんも、王都に用があるっていってなかった? 買い物にでも行くの、お父さん?」
 
 そう尋ねると、お父さんは、お母さんの顔を覗き込んだ。お父さんの用事って、お母さんと一緒に出かけるのかな?
 
「どうする、ローズ?」
「そうね。子猫ちゃんの受験前だけど、もう話しちゃっても良いんじゃないかしら? 子猫ちゃんの入学自体は、もう決まっているんだし」
「そうだな。よし、発表するとするか」
「ええ。お願いね、ダーリン」
「いや、〈野ばら亭〉の代表はローズなんだから、ローズが話すべきだ」
「共同代表じゃないの、ダーリン。それに、カペラ家の家長は、わたしの愛する、頼もしい旦那様であるダーリンよ」
「いやいや、ローズあってこその、カペラ家だろう? おまえのお陰で、おれはいつだって幸せなんだから」
「わたしこそ。わたしこそよ、マルーク。あなたのお陰で、わたし……」
「あのー、お話を進めてもらって良いでしょうか、お父さん、お母さん?」
「もう少しだけ、待っていましょうよ、チェルニ」
「勘弁してよ、お姉ちゃん。これがはじまると、いつも話が進まないじゃないの」
「それはそうなんだけど、両親の仲が良いって、素晴らしいことだもの。子供にとっては、どれほどの黄金にも勝る幸せよ。見ているだけで嬉しくなるじゃない、チェルニ?」
「これを本気でいってるんだから、すごいよ、お姉ちゃんは。カペラ家の中で、常識人って、実はわたしだけなんじゃないの?」
 
 そう。わがカペラ家では、お父さんとお母さんの〈愛の劇場〉は、わりとよく発生する。ネイラ様に、こっ、恋をしちゃって、一生ものの失恋をしそうな成り行きに、小さな胸を痛めている少女にとっては、わりといたたまれない空気なのだ。
 わたしの、ちょっとだけ冷たい視線に、お父さんがわざとらしく咳払いをして、話を戻してくれた。〈じゃあ、ローズ、頼む〉って、丸投げだったけどね。
 
「もう、ダーリンったら。いいわ。わたしたちの可愛い、愛する娘に、お父さんとお母さんから、大事な発表があります」
「ふふふ。楽しみね、チェルニ?」
「うん! 何なの、お母さん?」
「何と、お父さんとお母さんは、王都に〈野ばら亭〉の支店を出すことに決めました。キュレルの家はそのままにして、王都にも家を持って、行き来することになるのよ」
「わぁ! すごい、すごい! 王都にも〈野ばら亭〉ができるんだね!」
「ふふ。そして、わたしたちが、王都にも家を持つっていうことは?」
「えっ? 待って、待って。だったら、わたし、王立学院の寮に入らなくてもいいの?」
「そうよ、子猫ちゃん。わたしたちが探したのは、王城にも近い場所だから、家から王立学院に通えるのよ」
「やったー! わたし、お父さんたちと離れるのだけが嫌だったんだ。すごい! 嬉しい! ありがとう、お父さん、お母さん!」
「良かったわね、チェルニ。わたしも嬉しいわ」
「ありがとう、お姉ちゃん! あっ、でも、お姉ちゃんはどうするの? フェルトさんと離れちゃうよ? って、あれ? ひょっとして、お姉ちゃんは知ってたの?」
 
 そう尋ねると、アリアナお姉ちゃんは、まるで薔薇の蕾が開くみたいに、ふんわりと微笑んだ。やっぱり、知ってたんだね、お姉ちゃん?
 
 それから、お父さんとお母さんは、交互に事情を説明してくれた。キュレルの街で、絶大な人気を誇る〈野ばら亭〉の存在は、王都でも密かに話題になっていて、わざわざ泊まりに来たり、ご飯を食べに来たりしてくれるお客様が、けっこう多かったんだって。
 王都からのお客様は、噂で聞いた〈野ばら亭〉に来て、大満足してくれて、また噂にしてくれて……。結果的に、王都にも支店を出してほしいっていう要望が、前々から殺到していたらしいんだ。お父さんの料理は、本当に絶品だから、当然といえば当然だよね。えへへ。
 
 でも、最初のうち、お父さんは、まったく乗り気じゃなかったそうだ。お店を拡大して、味が落ちる話なんて、めずらしくもなかったから。自分の目の届かないところで、誰かに任せるのは、気が進まなかったんだって。
 
「今のうちの厨房は、十分に信頼できる。良い料理人が何人も育っているし、おれがいなくても、すぐに味が落ちるとは思わない。だから、王都に店を出すなら、〈野ばら亭〉をあいつらに任せて、おれが王都に行くことになるんだが、家族を置いていくのは、絶対に嫌だったんだ」
「だから、ダーリンは、何年も断っていたのよ。家族が第一ですって。でも、子猫ちゃんが、王立学院に進学することになったでしょう? だったら、いっそのこと、家族で王都に行けば良いんじゃないかっていうことになったのよ」
「お父さんとお母さんは、わたしの気持ちを聞いてくれたから、大賛成だって答えたのよ、チェルニ」
「それは、すごく嬉しいけど、お姉ちゃんはいいの? それとも、お姉ちゃんは、キュレルの家に残るの?」
「まさか。わたしも一緒よ、チェルニ」
「そうしたら、フェルトさんと離れちゃうじゃないの、お姉ちゃん」
「心配してくれて、ありがとう。でも、大丈夫。王都とキュレルの街は、日帰りできる距離ですもの。フェルトさんのお休みに合わせて、王都かキュレルの街で会えるわ。わたし、一年もしたら、お嫁に行くんだから、それまでの間は、家族と一緒にいたいの。お嫁に行くよりも先に、チェルニが王立学院の寮に入って、姉妹が離れ離れになるなんて、わたしも嫌だったのよ。もちろん、フェルトさんも賛成してくれているからね」
「それに、フェルトさん自身も、王都に来ることになるかもしれないしね。いずれにしても、アリアナがお嫁に行くまで、家族みんなで暮らしましょうね、チェルニ」
 
 あまりの嬉しさに、わたしは、ぐずぐずと泣き出してしまった。だって、王立学院への進学を決めてからも、家族と離れることだけが、嫌だったんだ。家から通えるなんて、最高だよ! これでもう、ネイラ様に失恋しても、何とか耐えられる……んじゃないかな……多分……。
 うちに四柱よんはしらも集まっちゃってる、神霊さんのご分体も、皆んなで喜んでくれた。〈喜ばしきこと也〉〈親子姉妹の仲良き姿こそ、現世うつしよの手本とならん〉〈親たる者の側なれば、雛も健やかに育つらし〉〈めえぇぇ、めえぇぇ〉って。
 
 お父さんたちによると、わたしたちが住む家は、もう仮契約までしているから、いつでも見学できるらしい。お店の方は、候補が三つくらいに絞られていて、最終決定をするところまできているんだって。
 
「子猫ちゃんの受験の前に、家の本契約だけは終わらせたいわね。本格的な引っ越しは後になるとして、受験の何日か前からは、王都の家に泊まれるようにしたいもの。神霊庁にお伺いするときに、皆んなで見にいきましょうね」
「すっごく楽しみ! お姉ちゃんは、もう見たの?」
「まだなのよ、チェルニ。一緒に行きましょうね」
「うん!」
「本当なら、受験前に慌ただしい真似をするものじゃないんだが、チェルニなら、試験は余裕だろう? 入学そのものは、もう決まっているんだし」
「平気だよ、お父さん。過去の試験問題をやってみたけど、ほとんど間違えなかったから。じゃあさ、すぐに神霊庁に行く?」
「そうだな。ご神霊方とコンラッド猊下のご意向に合わせて、近いうちに訪問させていただこう」
 
 こうして、わがカペラ家は、新しい展開を迎えることになったんだ。〈野ばら亭〉の王都進出と、カペラ家のお引越し! 嬉しくて、わくわくして、すっごく楽しみなんだけど、スイシャク様やアマツ様まで、〈我らの新しき住まいなるかな〉って喜んでいるのは、やっぱりこれからも同居してくれるから……なのかな……?
 

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