眉毛との闘い
こんちにちは、opsol bookのヤナガワです。
眉毛は私の一生の敵です。
というのも、今まで眉毛を納得のいく形にできたことがないんですよね。左右非対称だったり、そもそも理想の形ではなかったり。
「眉毛は抜かないほうがいい!」という意見もよく目にしますが、その言葉に従ったことは一度もありません。眉周りに一本でも不要な毛があれば全てを駆逐したいタイプなので、問答無用で引っこ抜きます。
今でこそ、理想の形ではないものの、人前に出ても支障がない程度には眉毛を整えることができるようになりましたが、子どもの頃はそうもいきません。なんせ知識がないものですから、何を使って整えればいいかすらわからないのです。
そんな時、中学1年生だった私の目に留まったのは、お風呂場に置いてあったT字カミソリでした。
家族が似たような形のもので髭を剃っているし、これで眉毛も剃れるのかもしれません。何事も実践あるのみ。怖れを知らない13歳の私は、T字カミソリで眉毛の処理に挑みました。
まずは形を整えるところから。眉上にT字カミソリを当てて、余分な部分を勘で剃っていきます。もちろん、左右対称にする技術や、理想の形すらありません。あまり細くしすぎると眉上の筋肉が目立ってしまうことすら知らない無知な私は、調子に乗ってどんどんT字カミソリを滑らせました。
その結果、完成したのは、見違えるほどに細くなった、いや、細くなり過ぎた眉毛。そして剥き出しの眉丘筋。
冷静に考えたらこの時点ですでにやりすぎなのですが、私は満足しませんでした。細くなったのなら、次は薄くしなければなりません。
眉毛を薄くするためには、ハサミで余分な毛をカットするのが一般的だと思います。でも、私の前に眉用ハサミなどありません。信じられるのは、T字カミソリのみ。
まずは、T字カミソリを眉毛全体に当てながら、小刻みにチョンチョンッと動かしていきます。こうすることで、すきバサミ的な、そういう役割を(当時の私からすると)担ってくれるわけです。密集した眉毛が刈られ、だいぶ薄くなってくれました。
己が納得いくまでこの動作を繰り返したヤナガワ。そうそう、こんな感じの薄眉になりたかったんだよね~、とルンルン気分で、翌日学校へ向かいました。
誰かに指摘されることもなく時間が過ぎ、迎えた午後の数学の時間。いつも通り授業が進み、もう少しで放課後だと浮かれていたその時、先生はこう言ったのです。
「このあたりは間違いやすいからね、気を付けるように。ヤナガワさんの眉毛みたいにね、えらいことになるから」
ヤナガワサンノマユゲミタイニ? アレレ?
普通にバレてました。
そもそも、極端に眉毛をいじることは校則違反だったので、私がやった行為は完全にアウトです。今振り返ってみると、あの時の眉毛は全剃りの一歩手前でした。
「えっ!? 薄いですか!?」
「濃い薄いのレベルじゃないよね」
「そんなにですか!?」
「ほぼないからね」
ほぼなかったみたいです。
眉毛をあんなに簡単に薄くできる画期的なアイテムを発見したのに、まさか大人にバレる程剃ってしまっていたとは(バレて当然です)。でも、じゃあ世の大人はどうやって眉毛を薄くしているのか。当時の私には分かりませんでした。
分からなかったが故に、私はその後もT字カミソリで眉毛を剃り続けました。
チョンチョンッではなく、もう少しソフトタッチにすればいいのかも。チョッ、くらいで。そんな生活を続けて3年が経ち、私は高校生になりました。
さすがにT字カミソリで眉毛を整えるのにも慣れてきましたが、小回りが利かないところが気になります。本当に皆、これで眉毛を整えているのだろうか? 疑問に思ったところで、「ねえねえ、眉毛ってさ、T字カミソリで剃ってる?」と口に出すなんて、16歳の乙女にはできません。
これからも私は一生T字カミソリで眉毛を剃り続けるのか、と考えていたある日、私は某100円ショップでとんでもないものを見つけてしまいました。
そう、I字カミソリです。
小回りが利いて剃りすぎる心配もない。もしかして、眉毛を整える時ってこれを使うのではないか。遅すぎる出会いです。
しかも、すぐ隣にはこんなものも陳列されていました。
そう、眉用ハサミです。
気付いてしまいました。眉毛を薄くするには、きっとこれを使うのです。恐らく、誰もT字カミソリですいたりしていないのでしょう。
こうして、T字カミソリからの卒業を迎えたヤナガワ。ただ、大人になってメイクをするようになってからも、眉毛との戦いは終わりません。
理想はふわっとした眉毛なのに、「ちょっと薄いかもな……」と思いアイブロウパウダーをぐりぐり重ねるせいで、いつもご立派な眉毛が完成しています。そろそろ、T字カミソリで眉刈り(?)してもいいのかもしれませんね。
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