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編集部日記(シンデレラ編)

こんにちは、opsol bookのヤナガワです。

10月14日(土)に、第1回ハナショウブ小説賞の授賞式を開催しました。

当日は司会を担当し、せっかくだからとMs.レモンチェッロさんに着物を着せてもらいました。着付けに必要なものはほとんど用意してもらったので、私が当日持参するのは、足袋、肌襦袢、草履のみ。着物を着る機会など滅多にないため、何をどういう手順で進めていくのか全く分からない私は、Ms.レモンチェッロさんが黙々と着付けを進める中、両足に力を入れて、体が動いてしまわないよう耐えることしかできませんでした。

上司に着付けを任せっきりというイレギュラーな状態でしたが、Ms.レモンチェッロさんの素早い手さばきによって無事に着付けが完了。急いで開会前の準備のために会場へと向かいます。会場についてから履き替えればいいと思い、持参した草履は鞄の中に仕舞ったまま、出勤時に履いていた靴で会社を後にしました。

遅刻を恐れて早めに出発したため、一番に会場へ到着。ここまでは車移動のため足元を見られることはありませんでしたが、降りるとなると話は別です。多少動きづらくなるかもしれませんが、着物を着た状態で、靴のまま動き回るのも憚られます。鞄からビニール袋に包まれた草履を取り出して、まずは右足分を地面へセット。続いて左足分を、と手元に視線を移すと、そこには空になったビニール袋が1枚。

あれ? 片方はどこに行った? てっきり1枚のビニール袋の中に両足セットで入っているものだと思っていましたが、取り出す最中に鞄の中にでも落としたのでしょうか。そう思って確認してみましたが、鞄をひっくり返しても草履が落ちてくる様子はありません。ええ? まさか、この袋には最初から右足分しか入っていなかった?

そんなはずはありません。昨日の夜、箱の中から取り出して、確かに鞄に入れたはず。ビニール袋に包まれた状態のまま鞄に入れたので、その時点で両足分揃っていたかは定かではありませんが、もしも片足ずつだった場合、箱の中に相方が残ってるはずなのです。さすがに、それに気付かないなんてことはないでしょう。

……いや、待てよ。この袋、サイズ的に片足分しか入らないかも。ということは、やはり今日私が持ってきたのは草履の右足のみ? あの箱の中には、もう片方が残されている? こんなことなら、嵩張るからと中身だけを取り出さず、箱ごと持ってくればよかった。

気付きたくない真実に気付き始めていた私は、その場で大パニックに陥りました。今から自宅に取りに帰っていては、開会に間に合いません。一先ず、まだ社内にいるMs.レモンチェッロさんへ現在の状況を連絡。その流れで、とあることを検索しました。

検索履歴

今履いているこの靴で、何とかごまかせないものか。時代の進化しにより、現代のファッションでは草履以外の靴でも問題ないのかもしれない。淡い期待を抱きながら調べてみましたが、当然というか何というか、こういった場では、やはり草履が適しているようでした。

こうなると、何らかの方法で草履をゲットするか、着物を脱ぐかの2択しかありません。どうすることもできずに右往左往していると、ヤマザトさんとミワさんが会場に到着。とにかく誰かに会いたかった私は、二人に現在の状況を話しました。

「ヤマザトさんすみません、会場に着いて、草履に履き替えようと思ったら、草履が右足分しかありませんでした……」
「何で!?」

そりゃそうだ。

どう用意すれば片足分だけ持ってくるんだ、と疑問に思うのは当然であり、この話を聞いた全員がヤマザトさんと同じ顔をしていました。そして口を揃えて「何で!?」と一言。いや、私も聞きたいです。

もう終わりだ……せっかくMs.レモンチェッロさんが着付けをしてくれたけど、もう脱ぐしかないよ……。どうにもならないと諦めかけていたとき、神の手を差し伸べられました。なんと、ヤマザトさんが私物の草履を自宅まで取りに帰ってくれるというのです。私が借り物の着物を着ていなければ、地面に膝をついて感謝したいくらいでした。

ヤマザトさんが戻るまでの間、あらゆる方に「あれ、ヤナガワさん! 靴履き替え忘れてますよ!」とコッソリ教えてもらいました(善意の指摘)。「聞きましたよ、なにやら事件があったようで」と、会場に到着した段階で、すでに噂を耳にしている人も(これはニヤニヤしながら)。本当にお恥ずかしい限りです。開会前にちょっとしたハプニングがあったことで、司会進行に対する緊張がどこかへ飛んでいったことだけが、不幸中の幸いでした。

閉会後、改めてヤマザトさんに感謝を伝えると「これはnote案件やな」と笑っていました。その場では「いや~」と渋りましたが、自分への戒めとしてここにあの日の過ちを書き記しておきます。

帰宅後、草履を仕舞っていた箱の中を見てみたところ、左足分がコロンと孤独に取り残されていました。やっぱりここにあったんかい。

そういえば、社内で着付けを終えて階段を下りていたときに、左足のスリッパが脱げてしまい階段に取り残されました。そのときは「あらやだ、シンデレラみたい」とふざけたことを考えていましたが、今思えば、これから私の身に降り注ぐトラブルが、すでに予兆として表れていたのかもしれません。本家とは状況は異なるものの、私のもとに草履を届けてくれたヤマザトさんは、まるで王子様ですね(その節は本当にありがとうございました)。

ここまでお読みいただきありがとうございます。恐らく、王子様は二度も現れてはくれません。次回以降は念入りに荷物チェックを行います。それではまた、次回の更新でお会いしましょう!


第1回ハナショウブ小説賞 結果発表!

最終選考結果が発表されました!
▼受賞作品は公式サイトをご確認ください。

〈刊行作品のご紹介〉

『神霊術少女チェルニ1 神去り子爵家と微睡の雛』(須尾見 蓮/2021)

定価 本体1,800円+税 A5変型版ハードカバー

ほとんどの国民が神霊術を使うルーラ王国の南部。
「チェルニちゃん、いてくれてよかった。きみに力を貸してほしいと思っているんだ。街の子供たちが三人、拐われたかもしれない」
この誘拐事件をきっかけに、チェルニの運命は大きく動き出す――。

▼noteでもお読みいただけます!


『フェオファーン聖譚曲オラトリオ』シリーズ(菫乃薗ゑ/2020)

※絶版中、現在新装版刊行準備中。

「私には、この大王国の黄昏の鐘が聞こえるよ」
王族、政治家、騎士たちのさまざまな思惑の中行われようとしている禁忌の「召喚魔術」。
アントーシャたちは、果たしてそれを止めることができるのか。そして強大な王国を倒すために採ろうとしている前代未聞の手法とは――。

▼リニューアル版(op.Ⅰ)はnoteでもお読みいただけます!