編集部日記(見守り編)
こんにちは、opsol bookのヤナガワです。
ここ数日の出来事をお話しすると、避けて通れない話題が一つ。先日、新型コロナウイルスに罹患しました。体調を崩したのが久しぶりだったことと、大事な予定が入っていたことが重なり、気分はかなり落ち込み気味。勝手に私は最強だと思い込んでいましたが、とんだ勘違いだったようです。
しかし、そんな状況でもご飯はおいしいもので。
幸いにも、私は味覚や嗅覚に影響が出ることはなかったため、いつも通りの食欲ではないものの、夜ご飯はなるべくしっかり食べるようにと心掛けていました。さすがに、高熱が続く期間は雑炊でしたが、終盤にはカレーライスを二日連続で食べられるほどに回復。多少のどの痛みはありましたが、食べないことには体調も戻るまい、と判断した結果です。食is大事。
そういえば、私の通勤経路には、大きな田んぼがあります。
その田んぼは、いつも5月頃になると田植えが始まります。綺麗に植えられた苗を見つめながら、思い出すのは小学生の頃のこと。授業で田植えをしたり、時には田んぼの中にいるオタマジャクシやアメンボを夢中で捕まえて虫かごに入れたことも。あの頃は、蛙も平気だったような。
そこから時が過ぎ、大人になった私は、気付けばオタマジャクシもアメンボも蛙も触れぬ人間になっていました。あの頃は確かに楽しんでいたはずなのに、今やこの体たらく。道端で跳ねる蛙を見ただけで逃げ腰になってしまうなど、あの頃の私が見たらきっと笑うでしょう。
田んぼの中をスイスイと泳いでいたオタマジャクシが、地上でぴょんぴょこ跳ねる蛙になっているということは、それだけ月日が経っているということ。植えられたばかりの苗が一面に広がっていた田んぼは、気付けば大きく育った稲で溢れていました。そんな光景をみるのも、今年で二度目です。昨年も見た覚えのある景色が、今年もやってきたと気づくと、途端に時間の流れの速さを感じますね。なんなら、私はまだお正月明けの感覚なのですが。
毎日変わらない景色を見つめながら通勤経路を進む私にとって、稲の成長は目に映る景色の中にある唯一の変化です。何気なく見つめていたそれが、いつの間にか大きくなって、刈られて、お米になって、また田植えが始まる。こんなにも早く成長していくんだなあ、私は何か変われたかしら、と物思いにふけることもしばしば。今年も勢力の強い台風が多く、農作物への影響も大きなものだったと思います。台風が過ぎ去り、翌日そこの田んぼを見ると、大きく成長した稲が倒れていることもありました。週5で成長を見守っていたものですから、その姿を見たときのショックは大きかったです。
療養中もたびたび稲のことを思い出していました。元気かい、稲。私はあまり元気ではないよ、稲。それでも、お米は食べるよ、稲。将来の君だね、稲。
よく考えたら、稲は台風が過ぎて少し経ってから刈られていたので、もうあの田んぼには存在していないのですが、そんなことは忘れて、私は変わらず思いを馳せていました。きっと、体調が悪くても雑炊やカレーライスをおいしく食べられたのは、私の愛情が稲に届いていたからかもしれません。
来年はどんな姿を見せてくれるのでしょうか。今からすでに楽しみで仕方がありません。どうか、来年も立派に育ちますように。いつか、お店で会える日がくるといいな。そのときは声を掛けてね、稲。
そして、暑さが残った秋の空の下で、田んぼで揺れるその姿を見つめながら、私は来年も足元で跳ねる蛙に怯えるんだろうな……。
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