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初めての車検で大恥をかいた話

こんにちは、opsol bookのヤナガワです。

毎朝通勤時に見ていた桜も、いつの間にか葉桜となっていました。早いもので4月も折り返しを迎えましたね。

さて、今回は私の初車検の話をお送りします。2年に一度、車検の時期が近付くと必ず思い出す出来事です。

初めての車検見積もり

人生で初めての車検が近付いていたある日のこと。見積もりをとってもらうために、某カー用品店へ赴きました。

以前、noteに「誰も並んでいないレジに並ぶのが苦手」と書きましたが、その症状は今回も例外ではありません。なかなか車検カウンターに行けない私は、とりあえず店内をうろつくことにしました。

▼レジについての話はこちら

誰か先に並ばないかな、とチラチラ視線を送りながら歩き回ってみるものの、カウンター前はガラガラ。誰も並ぶ素振りを見せません。

あまり徘徊を続けても怪しまれそうなので、そろそろ勇気を出そう。そう覚悟を決め、カウンターへ向かって一歩を踏み出した時、手前の商品棚を見ている一人の男性が目に入りました。その人は、しゃがみこんで商品を手に取っています。

店員さんだ! 品出し中かな、でも勇気を出すなら今しかない!

その男性に狙いを定め、真っ直ぐ進みます。途中で私に気が付いた男性は、ゆっくりと立ち上がり、目を合わせてこちらに歩み寄ってくれました。良かった、優しそうな店員さんで。「どうしましたか?」と語りかけるような微笑みで小首をかしげています。

「すみません! 車検の見積もりをお願いしたいんですけど……」
「あっ! すみません、僕、店員じゃないんですよ」

うっそ~ん。

あんなに優しく歩み寄ってくれたのに。まるで店員さんかのように微笑んでくれたのに。わざわざ立ち上がってくれたのに。店員さんじゃなかったんかい。

よく見ると、ここにいる店員さんは全員同じ色の上着を着ています。きっと制服なのでしょう。しかし、目の前の男性はどこからどう見ても私服。完全に私のミスです。

「アッ、失礼しました!」
「僕も車検の見積もりをしてもらおうと思っていたので、良かったら一緒に行きましょうか?」

大汗を流しながら混乱する私に、神様のようなご提案。この人、何でこんなに優しいんだ?

顔から火が出るとはこういうことか、と理解ができる程の恥ずかしさでした。そんな中、まるで店員さんの如く私の前を歩く男性は、カウンターに辿り着くと「すみません、車検の見積もりをお願いします」と言い、そのまま私をカウンターに誘導してくれたのです。自分も車検の見積もりを予定していた、と言っていたのに、その男性は自身の買い物を済ませ、こちらに会釈をしながらお店を後にしました。もしかして、私に気を使わせないように、優しい嘘を?

なんて良い人なんだ。なんだかどこかで見たことがある人のような気がするけど。とりあえずすごく優しい人だった。恥ずかしい思いを忘れるくらい温かい対応に、涙が出そうでした。

先ほどの出来事を嚙み締めながら見積もりの説明をしていただき、無事に車検の日程を決めることができました。それもこれも、あの男性が私をカウンターに導いてくれたからです。その節は本当にありがとございました。月日が経った今でも、このご恩を忘れることはありません。

翌日、興奮冷めやらぬ私は、あの男性の優しい嘘を同僚(複数人)に語りました。その度に、自身の恥ずかしいエピソードを披露していることには目を瞑って。

偶然の再会

あれから何週間かが過ぎ、車検見積もり大恥エピソードへの熱量が落ち着きを取り戻してきた頃。私は衝撃の事実と直面したのです。

その日、いつも通り仕事をしていた私は、とある取引先の方と社内ですれ違いました。いつも明るく挨拶をしてくださり、とても丁寧な仕事をされている、そんなイメージの方です。お会いする頻度は、3か月に一度くらい。私と直接関わりがあるわけではありません。

久しぶりにお会いしたその方の顔を見て、ひっくり返りそうになりました。あの日、某カー用品店で私が店員さんと間違えた、あの男性だったからです。

だから見覚えがあったのか! というか、向こうは私だと気づいていたから、こちらに歩み寄ってくれたのかもしれない! 次々と迫りくる事実に、恥ずかしいを越えてもはや笑えてきました。

「もしかして、あの日見積もりカウンターに誘導してくださりましたか?」なんて、聞けるはずがありませんし、「あの日、僕のことを店員さんと間違えていた方ですか?」と聞かれることもありませんでした。

その後も社内で見かけることはあったものの、あの日の出来事については一度も触れることがないまま、もうすぐ何度目かの車検を迎えます。もう私は店員さんとお客さんを間違えることは(多分)ありませんし、カウンターにだって(店内をある程度うろついてからなら)一人で行けるようになりました。

皆さまも、間違えて店内で買い物をしているお客さんに声を掛けてしまわないよう、お気を付けください。


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この誘拐事件をきっかけに、チェルニの運命は大きく動き出す――。

▼noteでもお読みいただけます!


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※絶版中、現在新装版刊行準備中。

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▼リニューアル版(op.Ⅰ)はnoteでもお読みいただけます!

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