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連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-33
わたしが、元気良く公開実技をお願いすると、司会役の先生が、なぜか微妙な顔をした。そして、手元の名簿を見ながら、大きな溜息を吐いていったんだ。
「ああ、その、公開実技を希望するんだね、チェルニ・カペラ君?」
「はい! お願いします」
「……わかった。そうすると、あれだ。きみが公開実技を希望した場合、間近で見学したいと希望している方々がおられるのだが、かまわないかね?」
「見学ですか? ご父兄と
連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-32
秋晴れの空の下、王立学院では、いよいよ神霊術の実技試験が行われようとしていた。神霊術の実技点は百点満点なんだけど、この点数は、受験の合否に直接は影響しない。ルーラ王国では、神霊術に優劣はないっていう考え方をしているから、合否を判断するのは、基本的には学科試験の点数なんだ。
だったら、どうして神霊術の実技試験を実施するかというと、優秀な人材を見逃さないようにするためなんだって。学科試験の合格定員
連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-31
午前中の筆記試験を終えて、わたしは、保護者の控え室に向かった。大好きなお父さんたちが、お昼ご飯を用意して待っていてくれるはずだから、おいしいものをたくさん食べて、午後からの実技試験に備えるんだ。
保護者控室までの道順は、大きく矢印で表示されているから、すぐにわかる。お母さんとアリアナお姉ちゃんは、もう神霊庁から移動できたのかな……と、思いながら歩いていたら、控室が近づくにつれて、さざなみみたい
連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-30
わたしは、耳障りな声のする方に向かって、冷たい視線を投げかけた。そこにいたのは、やたらにきらきらした服を着た、同じ年頃の男の子だった。後ろにお付きの人っぽい子がいるから、多分、地方の貴族なんだろう。内部進学じゃない地方貴族の子たちは、平民と一緒に試験を受けるからね。
子どものくせに偉そうな態度からして、間違いないと思う。顔は……妙に赤い気がするけど、別にどうでも良いや。わざわざ立ち上がるのも面
連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-29
今朝は、見事な秋晴れだった。えいやって、元気良く起き上がって、出かける準備を開始する。今日は、わたしにとって大切な一日、ついに迎えた王立学院の入試日なんだから。
わたしの枕元では、真っ白でふくふくのスイシャク様と、真紅でつやつやのアマツ様が、微かな寝息を立てていた。〈神霊さんって、人の子みたいに寝るものなの?〉とか、〈わたしが起き上がっても、そのままなんだ……〉とか、疑問に思うこともあるけど、
連載小説 神霊術少女チェルニ〈連載版〉 3-28
王都への濃密すぎる旅を終えて、わたしの日常が戻ってきた。といっても、十日もしないうちに王立学院の入試があるから、のんびりしている暇はないんだけどね。
一日空けて、午後から町立学校に登校する。卒業学年のわたしたちは、授業はとっくに終了していて、今は卒業までの予備期間になる。高等学校を受験する人や、卒業試験で赤点を取っちゃった人は、毎日のように用意されている補習授業を受けているし、自宅で勉強し