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三重県伊勢市にある小さな出版社です。 小説家になろうにて好評連載中の『神霊術少女チェルニ』が待望の書籍化、2021年12月24日(金)全国の書店にて発売決定! 既刊『フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ』リニューアル版もnoteと小説家になろうにて投稿中です。

フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 黄金国の黄昏

リニューアル版を連載しています。こちらからまとめて読むことができます。

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  • 58本

フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-11

 朗らかな表情のアントーシャに、最初に言葉を掛けたのはルーガだった。滅多に遠慮というものをしないルーガは、がりがりと頭を掻き毟りながら、呆れたように言った。 「アントーシャ様の仰ることの意味が、おれには全く分かりませんよ。おれの頭が悪いからなのか、アントーシャ様が途轍もない方だからなのか。多分、両方なのでしょうな」  大きな溜息を吐くルーガの様子に、アントーシャは更に微笑んだ。ルーガの周りでは、オローネツ辺境伯もイヴァーノも、何とも微妙な表情でアントーシャを見詰めている。

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フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-10

05 ハイムリヒ 運命は囁く10 宣言  短くはない時間を掛けて、真実の間で起こった出来事を語り終えたアントーシャは、もう一度深々と頭を下げた。頬には薄く涙の跡が光っていたものの、表情は晴々と明るく、見る者を安心させるだけの力強さが有った。 「ベルーハの指摘の御陰で、ぼくは最後に父上に御目に掛かることが出来ました。そして、父上が残して下さった鍵を通して、ぼく達の魂と霊は固く結び付けられました。今でも悲しくて|堪らず、耐えがたい気持ちになる瞬間は有りますけれど、ぼくは大丈夫

フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-9

05 ハイムリヒ 運命は囁く9 約束  召喚魔術の術式を破壊した直後、真実の間に立ち|竦み、星灯さえない虚無の夜空を見詰めていたアントーシャは、ゲーナの死と同時に出現した光球の軌跡を、絶望の眼差しで追っていた。微かに瞬く淡い黄色の光球は、人の身体を司る〈魄〉である。壮絶に四散したことによって、司るべき身体を失ったゲーナの魄は、瞬く間に微かな光さえも消し去り、何処とも知れない空に融けていった。人ならぬアントーシャの霊眼には、ゲーナの魄が身体としても記憶を失い、新しい熱量体とし

フェオファーン聖譚曲op.Ⅰ 5-8

05 ハイムリヒ 運命は囁く8 再会  オローネツ城の領主執務室では、オローネツ辺境伯と|家令のイヴァーノが、落ち着かない面持ちで書類に向かい合っていた。その日だけでも何度目になるのか分からない溜息を吐きながら、オローネツ辺境伯は眉間を指先で揉んだ。 「それにしても、アントンは何を考えているのだろう。あの子なら、瞬時に何処へでも転移出来るというのに、王都からオローネツ城まで、十日以上も掛けて馬で訪ねて来るなどと。やはり、何か理由が有るのであろうな」  オローネツ辺境伯が

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