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連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 86通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
王立学院の入学試験を終えたら、すぐにお手紙を書くつもりだったのに、翌日になってしまいました。優しいネイラ様のことだから、きっと、気にかけてくれていましたよね? 遅くなってしまって、本当に申し訳ありません。
翌日になった理由は、神霊術の実技試験を終えた途端、ふっと気が遠くなって、ついさっきまで熟睡していたからです。試験会場には、マルティノ様もきてくれていたから、このこ
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 85通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
今日は、キュレルの街の町立学校に行ってきました。わたしたち卒業生は、もう卒業前の待機期間に入っているので、授業はありません。わたしは、おじいちゃんの校長先生に会いたくて、久しぶりに登校したんです。
町立学校では、校長先生が大歓迎してくれました。わたしは、お父さんが持たせてくれた、栗の渋皮煮がごろごろ入ったパウンドケーキを、校長先生と仲良く分け合いながら、校長先生
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 84通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
今日は、キュレルの街の自分の部屋で、この手紙を書いています。生まれ育ったところって、やっぱり落ち着きますね。お昼前まで寝て、おいしいご飯を食べて、スイシャク様とアマツ様と一緒にごろごろして……わたしは、もう元気いっぱいです。
お母さんは、わたしの顔を見て、〈すぐに回復するのは、若いからこそよ〉って、笑っていました。最近、いろいろなことがありすぎて、一気に歳を取ったよ
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 83通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
今夜は、キュレルの街の家で、この手紙を書いています。王都の家も気に入っているんですが、いざ生まれ育った家に戻ってくると、やっぱり安心しますね。キュレルの街の夜空にも、美しい月と星が輝いていて……ただ、王都で見た月と比べると、ほんの少しだけ、寂しいものに思えるのは、ネイラ様と遠くなったからかもしれません。
自分では意識しなくても、それなりに疲れていたようで、家に帰っ
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 82通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
今夜は、とっても月が綺麗ですね。わたしは、今、王都の家の窓を大きく開けて、夜空を見ています。銀色に輝く月と満天の星々が、あまりにも鮮やかに見えて、少し驚いています。田舎でも都会でもない、穏やかなキュレルの街ならともかく、王国中から人が集まってくる王都でも、月や星は美しく、空気は澄んでいるんですから。
……と、めずらしく感傷的な書き出しになったのには、理由があります。
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 81通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
前回のネイラ様の手紙を読んで、わりと衝撃を受けてしまいましたよ、わたし。神霊さんの真実のお姿を目にするのは、魂の負荷が大き過ぎて、人の子には耐えられないから、見る人が無意識に思い浮かべた姿を仮とし、現世に顕現する……。
なるほどなって思って、神霊さんの深いご配慮に感動するお話だったんですけど、それだと、スイシャク様が、真っ白でふくふくの巨大雀になっちゃったのは、わた