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連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 80通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
忘れていました。〈神託の巫〉の宣旨とか、統帥権の話とか、平民の少女には、刺激の強過ぎる話題が続いたので、すっかり書くのを忘れていました。そう、ちょっと前までのわたしなら、驚愕して、感動に震えるはずの出来事……神霊庁で出会うことのできた、四柱のご神亀の存在について、すっぱりと忘れていたんです。
話の前提として、神霊庁のコンラッド猊下って、ものすごくネイラ様と仲が良さ
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 79通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
丁寧で率直なお手紙をいただき、ありがとうございます。わたしのような平民の少女が、王国の統帥権なんていう、重要機密っぽいことを質問したのに、ものすごくぶっちゃけ……いえ、わかりやすい答をいただいたこと、感謝しています。
でも、そうですよね。いくら〈神威の覡〉だからって、ネイラ様一人が、すべての戦力の統帥権を持っているなんて、どう考えても行き過ぎですよね? わたしが、
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 78通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
わたしが聞いちゃっても、良い話なのかどうか、かなり疑問なのですが、思い切って書いてしまいます。もし、差し障りがあるようなら、そう教えてください。すっぱりと割り切って、考えないようにしますので。
わたしが気になっているのは、前回の手紙で、ネイラ様が〈一つ一つが統帥権を意味する〉って教えてくれた、星の刺繍のことなんです。王国騎士団の漆黒の団服の襟元に、銀色の糸で星が刺
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 77通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
混乱だとか反省だとか謝罪だとか、暗めの話ばかり書いてしまいましたので、この手紙は、気楽な感じの内容にしたいと思います。何かっていうと、今日、〈花と夢の乙女たち〉から、大量の荷物が届けられたんですよ。
王都でも人気の服飾店である〈花と夢の乙女たち〉については、以前の手紙で、書いたことがあったと思います。うちのお母さんの好きなデザイナーさんが経営していて、王都の少女た
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 76通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
今、わたしは、深く反省しています。何かっていうと、前回の手紙についてです。ネイラ様から、優しいお返事をもらって、かなり気持ちが安定して、緊張がとけていって……途端に、恥ずかしくなっちゃったんです。
だって、前回のわたしの手紙って、卑怯だったと思うんです。優しいネイラ様が、十四歳の少女に冷たくできないってわかっていて、泣き言を並べていたんですから。それに、〈神威の覡
連載小説 神霊術少女チェルニ 往復書簡 75通目
レフ・ティルグ・ネイラ様
まだ王都にいる、チェルニ・カペラです。これから何通も手紙を送る間、ずっと王都にいる見込みの、チェルニ・カペラです。だって、ネイラ様に聞いてほしいことや、教えてほしいことが多過ぎて、一日に何回も手紙を書いてしまうと思うんです。
わたしの予定では、キュレルの街に帰ってから、ゆっくりと手紙を出すつもりだったんですけどね。大きな問題に直面したわたしが、心を落ち着けるには、す